其の百一 24区戦闘態勢

文字数 1,244文字

あの日の死を忘れるな


24区校の校舎が、屋上から一回に斜めに砕き割ったようにずるり崩れ落ちた。

ガラっと頭に乗っかったガレキを凍らせて砕く。

胸には、やっと力を使える解放感と死の足音を感じる恐怖が、カフェオレのように苦く甘くとろける。

宮城キョウコは胸に手を置いた。胸をくすぐるこの感覚は戦いの邪魔になってしまう。
(吉田の言った通りになるなんて。どう足掻こうとあたしらは駒ってことねーー。

そして、24区という住宅街だというのに、人の気配が全くない……)


「やはり貴様も奴ら(イレギュラー)の力を持っておったか。」
くちばしが白く凍ってるのを気迫で砕きながら、15メートルのカラスは歩み寄ってくる。

「持ったのは最近の話。この力が無いとあんたたちには敵わないって聞いたからね。
でも――」
超鳥の体を隈なく見張る
「ため息が出てくるわ。ねぇ千流と万樹は来てないの?」

「あの方々はこられちゃあ、島もろとも海の藻屑と化すだけじゃ。」

「あーそう。それは助かったわ。ここなら思う存分にやり合えるしね。」

キョウコはやる気満々に構えをとった。

「フ、そうか。ならすぐにでも喰われてくれんか?
お互いその方が楽だぞ。」

それを聞いて、彼女は手を叩いて腹を押さえて爆笑した。

「冗談。私にはまだ見たい景色があるのよ。」
右手に白い冷気を、左手に神官や救済者を連想する忌々しい蒼い水を留める。
黒い目を一層黒く濁らせて。

「さぁ、続きを始めましょう。」





「三島刑事!!!」
部下の男警官が走り寄ってきた。
「ご無事ですか三島刑事!!」

部下が焦るのも当然で、11区の戦いで負った傷は未だに完治していなかった。

その状態で、虐殺を起こした犯人との直接接敵し、なおかつ屋上から飛び降りて地上へと着地したのだ。
並みの人間なら死んでてもおかしくないのである。

「だい、じょうぶよ。私はタフなのが取り柄なんだから。

それより

?」

三島は24区校へ目にやった。誰もおらず

だけがある。

「神官や救済の代行者だとか、胡散臭いやつらと思ってましたけど……」
男警官はバツの悪そうな顔で俯く。

「私だって思ってたわよ。
だけど、彼らには確かな力がある。私たちには無い力が。
相手が得体のしれない以上、こっちもその覚悟が必要なんでしょう。
鹿島刑事はそれを見据えて、協力関係を結んだんでしょうし。」




現在24区校を中心に【三島隊200人】【桜隊150人】総勢300人の警官が巡回していた。

それに加えて、超鳥の使役するカラス約1000羽が24区の空を、路地裏を、大通りを監視カメラみたく隊列を組んでいる状況にあった。

24区は人一人として外を出歩く人はいなくなっており、全ての住民は自宅待機を命じられるのである。

『現在、カラスが異常発生です。警官の言葉に従い安全に家で待機をしてください』っと。



「上手い事言葉巧みに情報操作を行ったな。
あながちプロパガンダってのも間違いじゃない。」

二人目の救済の代行者は息を潜めている。

――その実力で事が治まれば一番良いんだが。」
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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