其の三十 夏休みの計画を立てよう
文字数 1,396文字
「早妃マドカはどこにいった――?」
「⁉――。……お姉ちゃんは11年前から行方不明ですけど。」
「そうかよ……」
血まみれ泥まみれの体を、機械のように動かして去っていったカイを見つめ続けた後、砂浜で倒れている吉田に目を移した。
「いてて……、ありゃここどこ?」
「起きたんなら―立ってくれませんか――、先輩――意外には重いんですよっ――‼」
カズミに背負われている吉田は、呑気にあたり見渡したあとようやく状況を理解した。
「わーおぉ……、現役女子高校生におんぶしてもらえるたぁなー……。……口惜しいが仕方ない。」
しぶしぶといった感じに吉田は地面に足をつけた。
「早妃って案外力持ちなんだな。っていうかどうしてここに?」」
「失礼ですね、自主練してるんですよ。――今日もあそこのコートで自主練してたら。吉田先輩と大窄カイが通っていくのを見たんですよ。何かなーって磯の方を見にいったら……。まさか喧嘩してるなんて。」
なんで呼び方変えてるんです?
こっちの方が呼びやすい。
軽口を叩きながら、吉田はそこにあったベンチに腰掛けた。
カズミは座らずに、吉田を見下ろしている。
夕日はもう山影に食われており、薄暗かった。
「初めて会ったときは真逆ですね…。」
「あのときはお前が座り込んでたからな。こんな小動物みたいな感じでね。『――甘えられないのもまた弱さ』。はは――我ながらええ言葉やで。」
「……。驚きましたよ。4月にアヤカに甘えたら、シン先輩に伝って、まさかあなたに繋がるなんて。」
「あのときには役員になってたからね。」
「第七席の特別、措置者……?そんな名前、いったい誰がつけたんです?」
「そりゃおま、オレに決まってるだろう」
「ひどいなまえ……」
「いやでも忘れられん名前じゃろがい。ま、そのおかげでいろんな奴らが周りにやってきたってわけさぁ。……黒猫とか。」
「ラック、そういえばどこにいったんです?今日物理室にいなかったですけど。」
「里帰りだって。
「……。」
「複雑――死人だって教えたはずなのに、オレと関わりを持ってくれるお前もまたそういう気持ちじゃないのか?」
「別に。本当に先輩が死んだかどうかなんて考える必要はありません。
「ふふふふ、ははははは――!」
「私、何かおかしいこと言いました?」
「いや、ただ
「……。それに先輩はいい人ですし。」
「マジぃ⁉それはめっちゃ嬉しいよ!――じゃあこれからも仲良くしようぜ。早妃カズミ。」
「は、はぁ、それは私としても嬉しいことですけど。急にどうしたんです?」
「夏休みが終わって二学期に入ったら、また生活が大きく変わるだろう?いってしまえば、『第一章閉幕。第二章開幕。』みたいな。」
「なんですかそれ。」
「エモーショナルな状況を作ってんだよ!とにかく、オホン――また二学期に会おうぜ。」
「は、はぁ、ま、また会いましょう。」
状況を上手く呑み込めなかった彼女ではあったが、元気を取り戻した彼に安堵し荷物を置いてるコートに引き返した。
「二学期は9月からだったわよね。先はながいなー。」
「⁉――。……お姉ちゃんは11年前から行方不明ですけど。」
「そうかよ……」
血まみれ泥まみれの体を、機械のように動かして去っていったカイを見つめ続けた後、砂浜で倒れている吉田に目を移した。
「いてて……、ありゃここどこ?」
「起きたんなら―立ってくれませんか――、先輩――意外には重いんですよっ――‼」
カズミに背負われている吉田は、呑気にあたり見渡したあとようやく状況を理解した。
「わーおぉ……、現役女子高校生におんぶしてもらえるたぁなー……。……口惜しいが仕方ない。」
しぶしぶといった感じに吉田は地面に足をつけた。
「早妃って案外力持ちなんだな。っていうかどうしてここに?」」
「失礼ですね、自主練してるんですよ。――今日もあそこのコートで自主練してたら。吉田先輩と大窄カイが通っていくのを見たんですよ。何かなーって磯の方を見にいったら……。まさか喧嘩してるなんて。」
なんで呼び方変えてるんです?
こっちの方が呼びやすい。
軽口を叩きながら、吉田はそこにあったベンチに腰掛けた。
カズミは座らずに、吉田を見下ろしている。
夕日はもう山影に食われており、薄暗かった。
「初めて会ったときは真逆ですね…。」
「あのときはお前が座り込んでたからな。こんな小動物みたいな感じでね。『――甘えられないのもまた弱さ』。はは――我ながらええ言葉やで。」
「……。驚きましたよ。4月にアヤカに甘えたら、シン先輩に伝って、まさかあなたに繋がるなんて。」
「あのときには役員になってたからね。」
「第七席の特別、措置者……?そんな名前、いったい誰がつけたんです?」
「そりゃおま、オレに決まってるだろう」
「ひどいなまえ……」
「いやでも忘れられん名前じゃろがい。ま、そのおかげでいろんな奴らが周りにやってきたってわけさぁ。……黒猫とか。」
「ラック、そういえばどこにいったんです?今日物理室にいなかったですけど。」
「里帰りだって。
お盆
には奥さんが帰ってくるんだと。おおかたナオミとヨウが教えたんだろ。複雑なもんだな。」「……。」
「複雑――死人だって教えたはずなのに、オレと関わりを持ってくれるお前もまたそういう気持ちじゃないのか?」
「別に。本当に先輩が死んだかどうかなんて考える必要はありません。
だってそんな見えないことを考えるよりも――今見えている先輩が、先輩であることは変わりありませんもの
。」「ふふふふ、ははははは――!」
「私、何かおかしいこと言いました?」
「いや、ただ
私の言ったことは間違ってなかった
ってね。」「……。それに先輩はいい人ですし。」
「マジぃ⁉それはめっちゃ嬉しいよ!――じゃあこれからも仲良くしようぜ。早妃カズミ。」
「は、はぁ、それは私としても嬉しいことですけど。急にどうしたんです?」
「夏休みが終わって二学期に入ったら、また生活が大きく変わるだろう?いってしまえば、『第一章閉幕。第二章開幕。』みたいな。」
「なんですかそれ。」
「エモーショナルな状況を作ってんだよ!とにかく、オホン――また二学期に会おうぜ。」
「は、はぁ、ま、また会いましょう。」
状況を上手く呑み込めなかった彼女ではあったが、元気を取り戻した彼に安堵し荷物を置いてるコートに引き返した。
「二学期は9月からだったわよね。先はながいなー。」