其の百二十九 朱の命題主義/逆襲のシン
文字数 2,638文字
「急げ!急げ!!!
薄っぺらい布でもこの際雑巾でも良い!!校舎が全壊する前に、クッションとして使えるもん全部集めろーーー!!!!」
25区校校舎前にあたる地面へ、消防士、地域の消防団が連携を取り合ってせっせと、マットレスを積み重ねていた。
校舎を包み込む巨大な炎――それら全てを消火するのが最善であるが、実際の炎は闇を焼き尽くさんばかりに膨れ上がり、人間にどうこうできる域を超えてしまったのである。
もはや校舎の最上階に取り残された約400名の人質を救うには、地面にしかれたマットレスに飛び込んで貰うしか考えつかなかったのであった。
だが、火の手は増すばかり、人質は意識があるかどうかも不明――25区校の生徒の命は絶望的であった。
「んん?
お、おい!?あれあれ!!!」
一人の消防士が上空を指さしながら、スライディングをし、地面にぶつかる直前、大柄で血塗れの青年をキャッチした。
「こいつは、、たしか、鹿島刑事といっしょにいた久木山レンとかいうやつじゃねぇか!?どうして、空から!??」
「――――――」
「っ――!?やべぇ!!ショック状態を起こして死にかけじゃねぇか!!!
待ってろ医療班まで送ってやる!!!」
そうして、一瞬の隙を突かれ瞬く間に瀕死になった久木山レン は、間一髪で命を繋ぐことになる。
-―――――――――――-―――――――――――
「グフっ……。クフフ、そういうわけでハチミツは退場してもらったわけ。
分かる?いま手に持ってるこの銀の銃――これはある倉庫に拾てられてた拳銃でね。
これを見せたら面白いほどに、あいつは体ガクガクさせてね~~。これで、早妃カズミの両親も殺したよ☆っていったらさらに携帯のバイブみたいになっちまってさ、その隙に肺に撃って、畜生どもの餌になってもらったってわけ。」
吉田はおもちゃのように、トリガー部分に指を引っかけて、クルクルと銃を回している。
「ずいぶん――悪趣味なことするようになったな。」
シンは、壁に突き刺さった刀身を左手の指で、引っこ抜く。
「シンの人格に戻ったか。
良いだろ?こういうのも一つの楽しみかたさ。精神に従い、憲法に従い、世界に従う、それもいいけど、一度くらい『主導権』を握ってみたくない?
お前たちにとってそれは当たり前と思うけど、世界から淘汰された弱者・敗北者にとってはそれは、希望みたいなものなんだよ。」
「違う。それこそ弱さから来る負感情からの考えだ。
強い人間は感じるだけで、満足できるものなんだよ。
空にある『星』を見ただけで感じれる人と、手に入れないと満足できないヤツ、どっちが賢いかは分かるだろ?
もっともお前には、もう星すら見れないだろうがな――!!!!」
シンは刃渡り20センチほどの僅かな刀身を持って、歩き出す。
「別自我 の次は自我 からの説法か??
そんな考えを持てるだけでも恵まれてるんだよ!!!
生きている内に真理を言えるようになるのは、強者だけなんだよ――!!」
駄々をこねるように、吉田はトリガーを引いた。
どこかがさらに倒壊したのか、余震の思わせるような震えとともに、シンは駆け出す。
「イラつくんだよ!!!この優等生が――っっ!!!」
冷静さより、私情が強く出ている様子で、朱目をさらに充血させながら、吉田は発砲を続ける。
「嫌いだ!!お前なんか!!!私 の出来ないことを淡々やりこなして、意図してないのに、人格すら維持しやがってッッ!!!」
感情をぶつけるよう、理解してもらえるような、そんな言動を『幼稚』と捨てるように、シンは刀身で銃弾を弾き落としていく。
「人格は、お前への恨みだッ!!不意打ちで殺した上に海に投げ落としやがって!!!」
そういいながら、シンは吉田の眼前に迫ると、負傷している首筋の大動脈に刀身を突き指した。
雨宿スイのときとは異なり、突き刺すだけでなく、心臓まで引き裂く勢いで、無理やり刀身を下ろしていった。
人間離れした力のせいか、風船が破裂したがごとく、壁や天井がべっちゃりと赤く染色
されていく。
「ガぁ――ッッ―――」
吉田の切り裂かれた胸から、規則正しく脈動している心臓が露出する。
赤く紅く、これ以上無いくらい朱く染まった血が吉田自身を溺れさせようと、噴き出していく。
「おうぇぇッ――や、やめろ……やめろやめろやめろやめろ―――ギッぎゃあああああッッーーー!!!!」
首筋に損傷を与えたシンは、次に吉田の腹に右手をめり込ませて、皮膚などを無理やり広げて、胃の中にまで到達させた。
「気づかないと思ったか?
ハチミツの持っていたホールの鍵を、誰にも取られないように飲み込んだことが悪手だったな!!」
胃の中にある鍵を掴んだシンは、黄土色の液体ごと、力づくで引き抜いた。
「シ、ンぅぅ……!!!」
大量失血に内蔵露出、それだけのダメージを負っても、吉田は絶命するどころか、意識すら失っていなかった。力いっぱいに開かれた目はシンを焼き付けんばかりに、血管が広がっている。
「おまえは……、、どこまぇ――」
言い切る前に、シンは吉田の顎を殴り飛ばし、炎が迫っている北棟まで吹っ飛ばした。
「じゃあな。トドメを刺しておきたいところだが、お前に会いたいって『人』がいるんだ。
ここまでにしといてやる。」
その直後、砂埃とともにパチパチっと火の粉が舞って、暴炎と爆風によって北棟そのもの爆ぜり散った。
-―――――――――――-―――――――――――-―――――――――――
「ヒュ~……はぁ~……、ま、まだ、喋れるのか?
いや爆発に飲まれなかった?」
吉田は真っ暗な小さな部屋で、壁にもたれかかった状態にあった。
部屋の奥のガラスから、茶色カーテンが目に入った。
教室にあるカーテンとは違って、分厚く、舞台を行うような厳かな空気を纏ったものである。
しかし、そんなことはどうでも良かった。なぜならどこで、どのように辿りついたか、吉田自身分からなかったのだ。
そんなとき、右の方向から階段をカツンカツンと上る、上品な音が耳を触った。
「ここは25区校の『ホール内の放送室』です。
もともと私が出る気はなかったのですが、長として、確認すべきことがあったため、わざわざここまで足を運びました。」
辺りは火の海であろう状況でさえ、場を涼やかに撫でる背の高い女性が現れる。
「ハ……!!ッごほごほッッ……!!
――神官も代行者も来ないと思ったが、そうか、お前がすでに来ていたのか……ッ。
わが愚妹 ――」
「――6600万年ぶりですね。わが姉よ。」
『朱』『蒼』の瞳が意志を持ったように、見つめ合った。
薄っぺらい布でもこの際雑巾でも良い!!校舎が全壊する前に、クッションとして使えるもん全部集めろーーー!!!!」
25区校校舎前にあたる地面へ、消防士、地域の消防団が連携を取り合ってせっせと、マットレスを積み重ねていた。
校舎を包み込む巨大な炎――それら全てを消火するのが最善であるが、実際の炎は闇を焼き尽くさんばかりに膨れ上がり、人間にどうこうできる域を超えてしまったのである。
もはや校舎の最上階に取り残された約400名の人質を救うには、地面にしかれたマットレスに飛び込んで貰うしか考えつかなかったのであった。
だが、火の手は増すばかり、人質は意識があるかどうかも不明――25区校の生徒の命は絶望的であった。
「んん?
お、おい!?あれあれ!!!」
一人の消防士が上空を指さしながら、スライディングをし、地面にぶつかる直前、大柄で血塗れの青年をキャッチした。
「こいつは、、たしか、鹿島刑事といっしょにいた久木山レンとかいうやつじゃねぇか!?どうして、空から!??」
「――――――」
「っ――!?やべぇ!!ショック状態を起こして死にかけじゃねぇか!!!
待ってろ医療班まで送ってやる!!!」
そうして、一瞬の隙を突かれ瞬く間に瀕死になった
-―――――――――――-―――――――――――
「グフっ……。クフフ、そういうわけでハチミツは退場してもらったわけ。
分かる?いま手に持ってるこの銀の銃――これはある倉庫に拾てられてた拳銃でね。
これを見せたら面白いほどに、あいつは体ガクガクさせてね~~。これで、早妃カズミの両親も殺したよ☆っていったらさらに携帯のバイブみたいになっちまってさ、その隙に肺に撃って、畜生どもの餌になってもらったってわけ。」
吉田はおもちゃのように、トリガー部分に指を引っかけて、クルクルと銃を回している。
「ずいぶん――悪趣味なことするようになったな。」
シンは、壁に突き刺さった刀身を左手の指で、引っこ抜く。
「シンの人格に戻ったか。
良いだろ?こういうのも一つの楽しみかたさ。精神に従い、憲法に従い、世界に従う、それもいいけど、一度くらい『主導権』を握ってみたくない?
お前たちにとってそれは当たり前と思うけど、世界から淘汰された弱者・敗北者にとってはそれは、希望みたいなものなんだよ。」
「違う。それこそ弱さから来る負感情からの考えだ。
強い人間は感じるだけで、満足できるものなんだよ。
空にある『星』を見ただけで感じれる人と、手に入れないと満足できないヤツ、どっちが賢いかは分かるだろ?
もっともお前には、もう星すら見れないだろうがな――!!!!」
シンは刃渡り20センチほどの僅かな刀身を持って、歩き出す。
「
そんな考えを持てるだけでも恵まれてるんだよ!!!
生きている内に真理を言えるようになるのは、強者だけなんだよ――!!」
駄々をこねるように、吉田はトリガーを引いた。
どこかがさらに倒壊したのか、余震の思わせるような震えとともに、シンは駆け出す。
「イラつくんだよ!!!この優等生が――っっ!!!」
冷静さより、私情が強く出ている様子で、朱目をさらに充血させながら、吉田は発砲を続ける。
「嫌いだ!!お前なんか!!!
感情をぶつけるよう、理解してもらえるような、そんな言動を『幼稚』と捨てるように、シンは刀身で銃弾を弾き落としていく。
「人格は、お前への恨みだッ!!不意打ちで殺した上に海に投げ落としやがって!!!」
そういいながら、シンは吉田の眼前に迫ると、負傷している首筋の大動脈に刀身を突き指した。
雨宿スイのときとは異なり、突き刺すだけでなく、心臓まで引き裂く勢いで、無理やり刀身を下ろしていった。
人間離れした力のせいか、風船が破裂したがごとく、壁や天井がべっちゃりと赤く染色
されていく。
「ガぁ――ッッ―――」
吉田の切り裂かれた胸から、規則正しく脈動している心臓が露出する。
赤く紅く、これ以上無いくらい朱く染まった血が吉田自身を溺れさせようと、噴き出していく。
「おうぇぇッ――や、やめろ……やめろやめろやめろやめろ―――ギッぎゃあああああッッーーー!!!!」
首筋に損傷を与えたシンは、次に吉田の腹に右手をめり込ませて、皮膚などを無理やり広げて、胃の中にまで到達させた。
「気づかないと思ったか?
ハチミツの持っていたホールの鍵を、誰にも取られないように飲み込んだことが悪手だったな!!」
胃の中にある鍵を掴んだシンは、黄土色の液体ごと、力づくで引き抜いた。
「シ、ンぅぅ……!!!」
大量失血に内蔵露出、それだけのダメージを負っても、吉田は絶命するどころか、意識すら失っていなかった。力いっぱいに開かれた目はシンを焼き付けんばかりに、血管が広がっている。
「おまえは……、、どこまぇ――」
言い切る前に、シンは吉田の顎を殴り飛ばし、炎が迫っている北棟まで吹っ飛ばした。
「じゃあな。トドメを刺しておきたいところだが、お前に会いたいって『人』がいるんだ。
ここまでにしといてやる。」
その直後、砂埃とともにパチパチっと火の粉が舞って、暴炎と爆風によって北棟そのもの爆ぜり散った。
-―――――――――――-―――――――――――-―――――――――――
「ヒュ~……はぁ~……、ま、まだ、喋れるのか?
いや爆発に飲まれなかった?」
吉田は真っ暗な小さな部屋で、壁にもたれかかった状態にあった。
部屋の奥のガラスから、茶色カーテンが目に入った。
教室にあるカーテンとは違って、分厚く、舞台を行うような厳かな空気を纏ったものである。
しかし、そんなことはどうでも良かった。なぜならどこで、どのように辿りついたか、吉田自身分からなかったのだ。
そんなとき、右の方向から階段をカツンカツンと上る、上品な音が耳を触った。
「ここは25区校の『ホール内の放送室』です。
もともと私が出る気はなかったのですが、長として、確認すべきことがあったため、わざわざここまで足を運びました。」
辺りは火の海であろう状況でさえ、場を涼やかに撫でる背の高い女性が現れる。
「ハ……!!ッごほごほッッ……!!
――神官も代行者も来ないと思ったが、そうか、お前がすでに来ていたのか……ッ。
「――6600万年ぶりですね。わが姉よ。」
『朱』『蒼』の瞳が意志を持ったように、見つめ合った。