其の四十七 彼らが見ている『世界』
文字数 1,318文字
「ハ――、はぁ。」
9月7日。16時50分。
青組練習場所、第一グラウンド。
「はい――水分補給しないと倒れるわよ。」
「………ありがと。ハチ。」
ナオミは水色の水筒を手にして、口を付けた。
ジャッジャっと、音を鳴らしながらハチミツは大地をならしていく。
「ダンスの練習するのもいいけど、焦りすぎじゃない?力入りすぎよ。」
無作法に地面に水滴をこぼしながら、
「驚いたわ。暴走族の頭がそんなことを言うなんて。」
「『元』よ。それに
そんなに?
うん、そんなに。
「はぁ。」
砂だらけなのをおかまいなしに、ナオミは腰を下ろした。
「汚れるわよ。」
「いいわよ…。それくらい。」
そうして、自らを抱きかかえるようにお山座りをした。
「ダンスも、応援の型だって、普通にできてるじゃない。」
オレンジの陽光を遮るようにハチミツは、彼女の前にそびえ立った。
「出来の悪さだったら――ミョウのこと聞いた?あの子教えるどころか、後輩であるアヤカに教えられてるんですって………」
明るく朗らかに、人とよく話すハチミツだからこそ感知した。
自分の言葉は、彼女に響いてる
(何かしないと、おちつかないのよ……)
木の葉を揺らす生ぬるい風が、汗まみれの二人の体を幾ばくか涼しくした。
『『動機』ってのは、自分を知らん奴には存在し得ないモンだ。』
暴君 の声が耳のなかで、鼓膜の中でよみがえる。
(あたしは、あたしは誰で、あたしはなに?」
他人が絶対に持ちえない答えを彼女は抱きかかえた。
(あたしは、大浜ナオミ。……それ以外、なにか、あるの……?)
意識したことを後悔するほどに、頭を、脳を、メッチャクソにするこの疑問 が、頭を沸かせてくる。
(勉強も――スポーツも――良かったぶんだけ、ママもパパもおじいちゃんもおばあちゃんもおじさんもおばさんも、喜んでくれるからやってきたの。生徒会 だってそのためよ。)
チラっと恐る恐るといった感じにハチミツの顔をうかがう。
「………」
逆光で何もみえない 。
(そうよ。そのためよ――。だけれど……)
「ねぇ――ハチ?いや……レン?」
男の体格でありながら、姉御肌なレンを見る。
「あなたは、どうして……生徒会に所属したの……?」
「『誇り』――それを賭けて戦ったから……かしらねぇ?」
意地悪そうにレンははぐらかした。
「『復讐』するためにオレは生きてるのさ。」
「『友達』のために、『自分』のために、『会長』は僕がやる。」
「
「死んだ『妻』に教えたいんじゃ。この世界がどういう場所じゃったのかをな……。」
「バイオリンの『音』が、俺の世界を創ってくれるんだよ。」
「『魅力 』――ぼくの、憧れなんです。」
「『強さ』――あの女を倒すために、俺に必要なものだ。」
「…………」
あれ以降、ナオミはハチミツと分れて一人で行動をしていた。
唇を噛み切るくらいに、歯を立てて。
「どいつも、こいつも――」
血の風味に吐き気を覚えながら、
「『どこ』をみてんよ………」
9月7日。16時50分。
青組練習場所、第一グラウンド。
「はい――水分補給しないと倒れるわよ。」
「………ありがと。ハチ。」
ナオミは水色の水筒を手にして、口を付けた。
ジャッジャっと、音を鳴らしながらハチミツは大地をならしていく。
「ダンスの練習するのもいいけど、焦りすぎじゃない?力入りすぎよ。」
無作法に地面に水滴をこぼしながら、
「驚いたわ。暴走族の頭がそんなことを言うなんて。」
「『元』よ。それに
こっちが本業
なの。目についちゃうところがいっぱいあるのよ。」そんなに?
うん、そんなに。
「はぁ。」
砂だらけなのをおかまいなしに、ナオミは腰を下ろした。
「汚れるわよ。」
「いいわよ…。それくらい。」
そうして、自らを抱きかかえるようにお山座りをした。
「ダンスも、応援の型だって、普通にできてるじゃない。」
オレンジの陽光を遮るようにハチミツは、彼女の前にそびえ立った。
「出来の悪さだったら――ミョウのこと聞いた?あの子教えるどころか、後輩であるアヤカに教えられてるんですって………」
明るく朗らかに、人とよく話すハチミツだからこそ感知した。
自分の言葉は、彼女に響いてる
だけ
にすぎないと。(何かしないと、おちつかないのよ……)
木の葉を揺らす生ぬるい風が、汗まみれの二人の体を幾ばくか涼しくした。
『『動機』ってのは、自分を知らん奴には存在し得ないモンだ。』
(あたしは、あたしは誰で、あたしはなに?」
他人が絶対に持ちえない答えを彼女は抱きかかえた。
(あたしは、大浜ナオミ。……それ以外、なにか、あるの……?)
意識したことを後悔するほどに、頭を、脳を、メッチャクソにするこの
(勉強も――スポーツも――良かったぶんだけ、ママもパパもおじいちゃんもおばあちゃんもおじさんもおばさんも、喜んでくれるからやってきたの。
チラっと恐る恐るといった感じにハチミツの顔をうかがう。
「………」
逆光で
(そうよ。そのためよ――。だけれど……)
「ねぇ――ハチ?いや……レン?」
男の体格でありながら、姉御肌なレンを見る。
「あなたは、どうして……生徒会に所属したの……?」
「『誇り』――それを賭けて戦ったから……かしらねぇ?」
意地悪そうにレンははぐらかした。
「『復讐』するためにオレは生きてるのさ。」
「『友達』のために、『自分』のために、『会長』は僕がやる。」
「
あの世
に行ったとき、お父さんに『自慢』したいんです。あなたの娘は凄いんだぞって。」「死んだ『妻』に教えたいんじゃ。この世界がどういう場所じゃったのかをな……。」
「バイオリンの『音』が、俺の世界を創ってくれるんだよ。」
「『
「『強さ』――あの女を倒すために、俺に必要なものだ。」
「…………」
あれ以降、ナオミはハチミツと分れて一人で行動をしていた。
唇を噛み切るくらいに、歯を立てて。
「どいつも、こいつも――」
血の風味に吐き気を覚えながら、
「『どこ』をみてんよ………」