其の十 恐怖の大窄カイ‼
文字数 1,199文字
「――っが―ァ―」
「ふん、優等生といっても弱いじゃねぇか……。」
男は人形のような華奢な女の首をその剛腕な片腕のみで持ち上げていた。
「――ぁ…ぁァ――」
男は微動にしない。ただただ退屈そうに見ている。むしろ先ほどから吹き始めた強風に、それによって打ち立てる波、葉のざわめきに焦点を当てていた。
「ヤメろぉっっ‼」
男は浜辺に至る下り道に目をやった。一七〇cmぐらいの男子生徒が声を荒げており、隣に小柄な男が、その肩に黒猫が乗っている。
「――ほぉ、お望みの仲間がやってきたではないか。」
吉田たち三人はその男――大窄カイと向きあった。
「それで何しにここに来た?」
「ナオミさんを助けにきたに決まってんだろ…!」
ヨウは狂犬のように叫んだ。ラックは吉田から降りて固唾を飲んでいる。
カイは首をならし、独裁者のように嗤いながら睨みつけた。
「ナオミ…?そうか!こいつを助けに来たのか⁉」
そう吐き捨て顎で彼女を指す。
「ぬうぅ……。」
ラックが一歩後ずさりした。当然である。相手は人間であり暴君と呼ばれている、二メートルほどの巨漢戦士なのだから。
「いいぜ、返してやるよ。」
意外にもあっさりと承諾されて拍子抜けた。
「――ホラよぉっ‼」
カイは首をしめたナオミをそのまま、投げ捨てた。
ズザザアァァー……。
……パラパラ。
吉田たちの中で時間が止まった。
「……。」
「―――っカイッッ!」
ヨウの怒号にカイは不敵な笑みを浮かべた。
そうしてヨウはカイの元へ駆け出した。
「このクソ野郎が――」
「よせッッッ‼」
吉田の一喝がヨウをピタリと止めた。カイの顔にも微量の驚きが含まれている。
「なぜッ⁉なぜ止める⁉こいつは――」
「いま優先するべきことはなんだ⁉それが分からんほど貴様は馬鹿じゃあるまい‼」
そこで初めて吉田の後方にまで飛ばされたナオミに意識をやる。制服どころか体まで砂まみれになりピクリとも動かない。そんな彼女の顔をラックは懸命に舐めていた。『これしかできない。』といった感じに。
「……。」
キッ、とカイを睨め付けた後ヨウは足早に彼女の方へと駆けて行った。
ヨウとラックがナオミを介抱しているなか、再度二人は向き直る。
「よくアイツを引き止めたな。」
カイはギチリと左手を握ってみせた。
「…これ以上事を大きくしたくないだけだ。」
淡泊に吉田は答える。
「今日は遠足なんだ。誰しもが楽しんでる時間に横やりは入れたくない。」
へぇ、と関心した目でカイは言う。
「そりゃあ確かに、俺たちのせいで後始末が多くのなるのは避けたいことだよなぁー。」
左手をぱっと開いて、一歩二歩吉田に近づいた。
「だがよ、ここまで来ておいて何事もないんじゃあ俺としては消化不良なんだよ。」
ギラり、と吉田の後方を視界に入れると同時に砲弾のように突っ込んだ。
「ここでまとめて潰してやる――‼」
「――‼」
「ふん、優等生といっても弱いじゃねぇか……。」
男は人形のような華奢な女の首をその剛腕な片腕のみで持ち上げていた。
「――ぁ…ぁァ――」
男は微動にしない。ただただ退屈そうに見ている。むしろ先ほどから吹き始めた強風に、それによって打ち立てる波、葉のざわめきに焦点を当てていた。
「ヤメろぉっっ‼」
男は浜辺に至る下り道に目をやった。一七〇cmぐらいの男子生徒が声を荒げており、隣に小柄な男が、その肩に黒猫が乗っている。
「――ほぉ、お望みの仲間がやってきたではないか。」
吉田たち三人はその男――大窄カイと向きあった。
「それで何しにここに来た?」
「ナオミさんを助けにきたに決まってんだろ…!」
ヨウは狂犬のように叫んだ。ラックは吉田から降りて固唾を飲んでいる。
カイは首をならし、独裁者のように嗤いながら睨みつけた。
「ナオミ…?そうか!こいつを助けに来たのか⁉」
そう吐き捨て顎で彼女を指す。
「ぬうぅ……。」
ラックが一歩後ずさりした。当然である。相手は人間であり暴君と呼ばれている、二メートルほどの巨漢戦士なのだから。
「いいぜ、返してやるよ。」
意外にもあっさりと承諾されて拍子抜けた。
「――ホラよぉっ‼」
カイは首をしめたナオミをそのまま、投げ捨てた。
ズザザアァァー……。
……パラパラ。
吉田たちの中で時間が止まった。
「……。」
「―――っカイッッ!」
ヨウの怒号にカイは不敵な笑みを浮かべた。
そうしてヨウはカイの元へ駆け出した。
「このクソ野郎が――」
「よせッッッ‼」
吉田の一喝がヨウをピタリと止めた。カイの顔にも微量の驚きが含まれている。
「なぜッ⁉なぜ止める⁉こいつは――」
「いま優先するべきことはなんだ⁉それが分からんほど貴様は馬鹿じゃあるまい‼」
そこで初めて吉田の後方にまで飛ばされたナオミに意識をやる。制服どころか体まで砂まみれになりピクリとも動かない。そんな彼女の顔をラックは懸命に舐めていた。『これしかできない。』といった感じに。
「……。」
キッ、とカイを睨め付けた後ヨウは足早に彼女の方へと駆けて行った。
ヨウとラックがナオミを介抱しているなか、再度二人は向き直る。
「よくアイツを引き止めたな。」
カイはギチリと左手を握ってみせた。
「…これ以上事を大きくしたくないだけだ。」
淡泊に吉田は答える。
「今日は遠足なんだ。誰しもが楽しんでる時間に横やりは入れたくない。」
へぇ、と関心した目でカイは言う。
「そりゃあ確かに、俺たちのせいで後始末が多くのなるのは避けたいことだよなぁー。」
左手をぱっと開いて、一歩二歩吉田に近づいた。
「だがよ、ここまで来ておいて何事もないんじゃあ俺としては消化不良なんだよ。」
ギラり、と吉田の後方を視界に入れると同時に砲弾のように突っ込んだ。
「ここでまとめて潰してやる――‼」
「――‼」