其の十三 六月
文字数 1,518文字
「こんにちは。生徒会役員諸君。本日より担当として配属された『上崎レイジ』だ。よろしく頼む。」
六月。夏の暑さと雨のしずくが絡まる季節。生徒たちの制服は黒から白へと変わりつつ、身軽になったせいか以前よりキレが増したような気さえ起こす。
だが、生活自体に変化はない。授業を受けて放課後へと移る。
「ハチ先輩って、どうして生徒会に入ったんすか?。」
スイは長机にかさばっているプリントを整理しながら、何気なしにハチミツに尋ねた。
「やぶからぼうに…、どうしたのかしら?」
壁によっかかり、夕焼けをその黒い瞳に入れながら返答する。
「今でこそ、大窄カイが暴君と呼ばれて恐れられているけど、三、四年前ぐらいは23区の久木山って呼ばれてたじゃないですか。」
「や~ねぇ~、やんちゃしてたときのことよ。」
「でも、今は役員になって保健委員で生徒の健康を守ってるって考えると、どうも府に落ちないって感じで。」
スイは先のほうにあるポスターを見る。食中毒注意、湿気注意、水分を取りましょう、と注意喚起が記されている。
「ウフフ、私だって驚きだわ。保健委員どころか生徒会にだって興味なかったもの。」
目をスイに向けて、
「ま、一区切りつけたってだけよ。やり合うのも良いけど、真逆のスタンスで行ってみたくなったの♡」
お嬢様のように手を口に当てて、
「蛇は雛(ひな)を食べるけどね、じゃあ蛇が雛を育てたらって疑問に思ったのよ。」
ハチミツは目を細め、薄笑いを浮かべた。
そのハチミツの様子をひとしきり眺めた後、
「しかし、資料の整理おわりませんね。」
パチ、パチとホッチキスで止めながらスイは話題を変えた。
「そうねぇ…、他に人がいれば早く終わるんでしょうけど……」
ハチミツは長机を囲むように配置されている椅子を見渡す。
「アヤカは高総体に向けてすぐに部活に行っちゃったし、ナオミもすぐに帰っちゃったし。」
次は悲しい顔をしながら、ハチミツも資料を整理し始める。
「アヤカちゃんはまぁ分かるんですけど、ナオミ先輩どうしたんですかね?髪はちゃんととかれてなかったし、イケイケな先輩とは思えない程ぎこちのない話し方だったし。」
手を動かしながら口を動かすスイ。
「保護者役のヨウ先輩に聞いても『知らない。』と言うだけでしたしねー。」
裏で何かが起こったことを察しながら、トントンと資料を整えた。
『なぜ小僧は、学ランをマントのように羽織っている?』
『決まってっだろ、カッコいいからさ☆』
『きめぇ』
『貴様、オスだというのにこの良さが分からんというのか?調教するぞおぉ⁉』
『やれるもんならやってみろニャ‼』
物理室のドアごしに、そのような茶番を盗み聞きながら呆れた顔をスイは浮かべる。
「いつでも変わらないんですね。吉田先輩って。」
一言つぶやいた。
「あの二人に聞いても『知らない』って言うんでしょうか?」
「いいえ、『言えない』らしいわ。」
「『言えない』?」
「二日前に聞いてみたのよ。そしたら『これは自分のことだから秘密にしてほしいって口止めされた。』って言われてね。」
口止め…、確認するようにスイは復唱する。
「おそらく、吉田ミョウ、大浜ナオミ、堤ヨウ、ラックの四人で共有された秘密でしょうね。」
「ハチ先輩……?」
どうするべきかと、スイは疑問を問う目で見つめる。
「私達に教えない以上、知らない前提で接していきましょう。大丈夫よ。もともとこういうのが『特別者』であるミョウの専門なんだから。それにいざとなったら会長や新しく来た先生もいるしきっと大事にはならないわよ。」
可愛い後輩であるスイに、不安を抱かせないようにハチミツはその場を収めた。
六月。夏の暑さと雨のしずくが絡まる季節。生徒たちの制服は黒から白へと変わりつつ、身軽になったせいか以前よりキレが増したような気さえ起こす。
だが、生活自体に変化はない。授業を受けて放課後へと移る。
「ハチ先輩って、どうして生徒会に入ったんすか?。」
スイは長机にかさばっているプリントを整理しながら、何気なしにハチミツに尋ねた。
「やぶからぼうに…、どうしたのかしら?」
壁によっかかり、夕焼けをその黒い瞳に入れながら返答する。
「今でこそ、大窄カイが暴君と呼ばれて恐れられているけど、三、四年前ぐらいは23区の久木山って呼ばれてたじゃないですか。」
「や~ねぇ~、やんちゃしてたときのことよ。」
「でも、今は役員になって保健委員で生徒の健康を守ってるって考えると、どうも府に落ちないって感じで。」
スイは先のほうにあるポスターを見る。食中毒注意、湿気注意、水分を取りましょう、と注意喚起が記されている。
「ウフフ、私だって驚きだわ。保健委員どころか生徒会にだって興味なかったもの。」
目をスイに向けて、
「ま、一区切りつけたってだけよ。やり合うのも良いけど、真逆のスタンスで行ってみたくなったの♡」
お嬢様のように手を口に当てて、
「蛇は雛(ひな)を食べるけどね、じゃあ蛇が雛を育てたらって疑問に思ったのよ。」
ハチミツは目を細め、薄笑いを浮かべた。
そのハチミツの様子をひとしきり眺めた後、
「しかし、資料の整理おわりませんね。」
パチ、パチとホッチキスで止めながらスイは話題を変えた。
「そうねぇ…、他に人がいれば早く終わるんでしょうけど……」
ハチミツは長机を囲むように配置されている椅子を見渡す。
「アヤカは高総体に向けてすぐに部活に行っちゃったし、ナオミもすぐに帰っちゃったし。」
次は悲しい顔をしながら、ハチミツも資料を整理し始める。
「アヤカちゃんはまぁ分かるんですけど、ナオミ先輩どうしたんですかね?髪はちゃんととかれてなかったし、イケイケな先輩とは思えない程ぎこちのない話し方だったし。」
手を動かしながら口を動かすスイ。
「保護者役のヨウ先輩に聞いても『知らない。』と言うだけでしたしねー。」
裏で何かが起こったことを察しながら、トントンと資料を整えた。
『なぜ小僧は、学ランをマントのように羽織っている?』
『決まってっだろ、カッコいいからさ☆』
『きめぇ』
『貴様、オスだというのにこの良さが分からんというのか?調教するぞおぉ⁉』
『やれるもんならやってみろニャ‼』
物理室のドアごしに、そのような茶番を盗み聞きながら呆れた顔をスイは浮かべる。
「いつでも変わらないんですね。吉田先輩って。」
一言つぶやいた。
「あの二人に聞いても『知らない』って言うんでしょうか?」
「いいえ、『言えない』らしいわ。」
「『言えない』?」
「二日前に聞いてみたのよ。そしたら『これは自分のことだから秘密にしてほしいって口止めされた。』って言われてね。」
口止め…、確認するようにスイは復唱する。
「おそらく、吉田ミョウ、大浜ナオミ、堤ヨウ、ラックの四人で共有された秘密でしょうね。」
「ハチ先輩……?」
どうするべきかと、スイは疑問を問う目で見つめる。
「私達に教えない以上、知らない前提で接していきましょう。大丈夫よ。もともとこういうのが『特別者』であるミョウの専門なんだから。それにいざとなったら会長や新しく来た先生もいるしきっと大事にはならないわよ。」
可愛い後輩であるスイに、不安を抱かせないようにハチミツはその場を収めた。