其の六十九 リンフォン(黒い本)

文字数 742文字

リンフォン――ですか。

そう、ですね。

私の知識であれば、教えますよ。






 それは少し前、ネットの掲示板より書き込まれた一つの都市伝説

 正二十面体で構成された精巧なパズル

 『リンフォン』――それは、リンフォンを手にした少女の話




 少女はとても好奇心旺盛であった。

 自分はこれからどう生きるのか
 自分はどう求められているのか

 人間が男と女に分れたのは何故なのか
 自分が女に生まれたのは何故なのか

 神は存在するのか
 神は必要なのか

 地球に生命が出現したのはいつからなのか
 地球は生命を愛しているのか


 日頃からまとまりのない
 答える必要のないことばかり考える女の子だった。

そんな少女は、骨董店で見慣れの無いパズル(リンフォン)を手に取った。

見たことのない物を手に入れて、嬉々として家に持ち帰った。



数日後、彼女は首を切って自殺した。

『知らなければよかった』

そう書き残して。


設定として、リンフォンは『この世全ての凝縮体』であるらしかった。


世界が始まって――

それが終わるまでの、全ての出来事を知ることができるとか……。






「わたしが知ってるのは、これくらいですかね。

なんだか……、その女の子が自殺しちゃった気持ち、分かる気がしますよ。

だって、全てを知ってしまったら――

面白い事なんて一つもないと思いますし。

それが、『知ることを楽しみにしてる人』からしたら、命を賭けたネタバレですよ。」




鹿島の前に座ったナナは、『少女』を憐れむような顔を浮かべて喋っていた。

「『無知であることは幸福を指し示す』だな。まさに……。」

鹿島は最後の一滴であるオレンジジュースをすすった。
チーズケーキはもう残っていなかった。

「もしかして、その『黒い本(リンフォン)』を書いた人って



はは。」

ナナは冗談混じりに、やるせない笑いを起こした。

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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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