其の百十六 久木山レン、雨宿スイ 出撃!!
文字数 1,608文字
11月1日 45区 警察本部
――24区の処理はどうするつもりかね?
夕暮れの陽が、男たちの目を照らす
――警察諸君の言った【特別措置者】、それらの猛威によって、24区は氷とガレキの山と化して、
その目は、一人の男を突き指している
――金、時間、人望……、君たち警察はどれほど無駄にしたら気が済むのかね?
――聞けば得体の知れない【しんかん】を名乗るものと協力してるようじゃないか?成果は出たのか?三島も桜も、市民も大勢の者が重軽傷を負ったそうだが、鹿島刑事?
ようやく、といった感じに男は口を動かす。
「24区のことも、これまでの事件のことも、全てはこの私の不徳と致すところです。
あなた方市役所職員の言う事は、何一つ間違ってはおりません。罰であれば、いまからでも受けましょう。
自らの命を顧みない【覚悟】を持った人がいれば、警察本部長の座をお譲りいたしましょうか?」
歳をとった職員が、不満そうに鼻をならす。
「事件を解決できたら、私を戦犯として処刑してもらっても構いません。それまでは私に指揮を取らせていただきたい――」
-―――――――――――-―――――――――――
「そう啖呵を切ったってわけですか。鹿島刑事。」
小柄で中性的な青年が、隣から声を掛けた。
「もう、事件とかのレベルじゃないですね。町一つ容易に消し飛ぶなんて。
新聞でも大きく報道されてましたよ。この病院だって負傷者でパンパンですし。
あー、今日で25区高校も休校になるみたいです。」
『集中治療室』と書かれた赤い蛍光板が、ジジっと音を立てた。
「未だに、大窄カイも三島刑事も桜刑事も出てきませんね……。
はは、、当たり前か、、全身複雑骨折の裂傷、両足に風穴、喰いちぎられた肩、生きてるだけでも、奇跡ってやつだし……」
うんざりした表情で青年は顔を俯かせる。
それに合わせて、鹿島は帽子を深く被り直した
「――雨宿のボウズよ、
スイは、自身をなだめるため、長く、長く、長く、息を吐いた。
-―――――――――――-―――――――――――
「やったよ~~ハチちゃんハチちゃん!!折り鶴作れたよーーー!!!」
少女がベッド上で、はしゃぎまくる。
「さすがね♡ユキちゃんってば上手~~!!!!」
合わせてハチミツも、少女とハイタッチをした。
「でも、これをあと数百羽もーー?千羽鶴ってたいへん~~~。」
「うふふ、作ってしまえば意外にあっという間よ♡」
ハチミツは作り終えた鶴を机に置いた。
「――きっとあっという間だから、作り続けていってね。暇潰しにも良いと思うし……」
そういいながら、固い笑顔を作った。
その顔をみながら、少女は鶴に瞳を向ける。
「ハチちゃんはさ、死なないでね。」
その言葉の重み、決して6才の女の子が知っていいものではない。
喉の奥から出された、生への渇望、それを惜しみなく【笑顔】という、無垢なる武器への換装は、ハチミツの――久木山レンを無力感へと誘うのに事足りた。
「またここにお邪魔するわよ。」
負け惜しみのような言葉を残して、病室から退室する。
(良い人ほど早死にする。良い事をほど後に惨状を生み出す。
【良】ほど面倒なものはないわね。)
拭うように、【鹿島ユキ】と書かれた名札に手を置いた。
「久しぶりですね。ハチミツのそんな目は、人を殺すときぐらいだったのに。」
ハチミツは乱れた髪をかき上げた。
「――もう気色悪い言葉使いはやめなさい。スイ。」
「は、ははは――、助かったよレン。敬語はかったるくてね。
LINEは見たか?前々から噂があった、
刑事さんからその確証がとれた。十中八九絡んでるよ。」
「あなたの証言も含んだら、100%よ。もちろん行くわよね?」
ハチミツは首を鳴らし
スイは肩を鳴らした。
「殺しに行こうか。物理室の下衆野郎を。」
――24区の処理はどうするつもりかね?
夕暮れの陽が、男たちの目を照らす
――警察諸君の言った【特別措置者】、それらの猛威によって、24区は氷とガレキの山と化して、
3週間
が経過した。区民は現在、市の持つ避難キャンプや旅館に滞在しているが、精神状態は不安定なことに変わりはない。その目は、一人の男を突き指している
――金、時間、人望……、君たち警察はどれほど無駄にしたら気が済むのかね?
――聞けば得体の知れない【しんかん】を名乗るものと協力してるようじゃないか?成果は出たのか?三島も桜も、市民も大勢の者が重軽傷を負ったそうだが、鹿島刑事?
ようやく、といった感じに男は口を動かす。
「24区のことも、これまでの事件のことも、全てはこの私の不徳と致すところです。
あなた方市役所職員の言う事は、何一つ間違ってはおりません。罰であれば、いまからでも受けましょう。
自らの命を顧みない【覚悟】を持った人がいれば、警察本部長の座をお譲りいたしましょうか?」
歳をとった職員が、不満そうに鼻をならす。
「事件を解決できたら、私を戦犯として処刑してもらっても構いません。それまでは私に指揮を取らせていただきたい――」
-―――――――――――-―――――――――――
「そう啖呵を切ったってわけですか。鹿島刑事。」
小柄で中性的な青年が、隣から声を掛けた。
「もう、事件とかのレベルじゃないですね。町一つ容易に消し飛ぶなんて。
新聞でも大きく報道されてましたよ。この病院だって負傷者でパンパンですし。
あー、今日で25区高校も休校になるみたいです。」
『集中治療室』と書かれた赤い蛍光板が、ジジっと音を立てた。
「未だに、大窄カイも三島刑事も桜刑事も出てきませんね……。
はは、、当たり前か、、全身複雑骨折の裂傷、両足に風穴、喰いちぎられた肩、生きてるだけでも、奇跡ってやつだし……」
うんざりした表情で青年は顔を俯かせる。
それに合わせて、鹿島は帽子を深く被り直した
「――雨宿のボウズよ、
例のアレ
の確証がとれた。」スイは、自身をなだめるため、長く、長く、長く、息を吐いた。
-―――――――――――-―――――――――――
「やったよ~~ハチちゃんハチちゃん!!折り鶴作れたよーーー!!!」
少女がベッド上で、はしゃぎまくる。
「さすがね♡ユキちゃんってば上手~~!!!!」
合わせてハチミツも、少女とハイタッチをした。
「でも、これをあと数百羽もーー?千羽鶴ってたいへん~~~。」
「うふふ、作ってしまえば意外にあっという間よ♡」
ハチミツは作り終えた鶴を机に置いた。
「――きっとあっという間だから、作り続けていってね。暇潰しにも良いと思うし……」
そういいながら、固い笑顔を作った。
その顔をみながら、少女は鶴に瞳を向ける。
「ハチちゃんはさ、死なないでね。」
その言葉の重み、決して6才の女の子が知っていいものではない。
喉の奥から出された、生への渇望、それを惜しみなく【笑顔】という、無垢なる武器への換装は、ハチミツの――久木山レンを無力感へと誘うのに事足りた。
「またここにお邪魔するわよ。」
負け惜しみのような言葉を残して、病室から退室する。
(良い人ほど早死にする。良い事をほど後に惨状を生み出す。
【良】ほど面倒なものはないわね。)
拭うように、【鹿島ユキ】と書かれた名札に手を置いた。
「久しぶりですね。ハチミツのそんな目は、人を殺すときぐらいだったのに。」
ハチミツは乱れた髪をかき上げた。
「――もう気色悪い言葉使いはやめなさい。スイ。」
「は、ははは――、助かったよレン。敬語はかったるくてね。
LINEは見たか?前々から噂があった、
アイツ
は一年前に死んでるってやつ。刑事さんからその確証がとれた。十中八九絡んでるよ。」
「あなたの証言も含んだら、100%よ。もちろん行くわよね?」
ハチミツは首を鳴らし
スイは肩を鳴らした。
「殺しに行こうか。物理室の下衆野郎を。」