其の五十八 動機

文字数 900文字

小太りのヤクザの頭であるゲンジは、肩で息をしながら
目の前の少年を睨みつける。

「ハァ、てっめぇ、いい加減くたばりやがれ……
あと何回――」
血塗れの鉄パイプを地面に叩きつける
「殴れば気が済むんだぁ!?」

ソウマの顔はペンキのようにだらだらと、赤く染まっている。
「あんたこそ、あと何回ぶち込めば、倒れてくれるんだぁ!?」

ソウマも重症であることは、一目で見て分かるが
ゲンジもまた、顔は赤く腫れあがり、服はボロボロで足をひきづっていた。

周りもまた同じような光景だった。

肩、足、頭から血を流す学生たち。

顔面が、腹が、陥没しているヤクザの下っ端たち。

「ったく、獣事件の憂さ晴らしだってのに……
随分ガキどもを甘く見てたらしいな……。」


(しんじまうよ~~……
早く降参しちまえよ~~)
ケンジは変わらず観戦していた。






25区高校 物理室前

少女から借りた制服をキュっと掴みながら、物理室を眺めていた。

『わしらは、この世界の『特別措置者(イレギュラー)』を殺しに来たものだ。』
前を向きながら、顔を合わせようともしない高潔な鶴はそう言っていた。

『私は『救済』の代行者として遣わされたものです。
……ええ、あなたの察しているとおり私は

。』
どこか申し訳ないような顔で、青いスカーフを外した少女は語った。

この高校に行きつく間、さまざまなことを聞いた。


神官――神であり、主であり、母である惑星の平和維持を目指すものたち。

代行者――自分の代わりに死人を遣わせて、目的を果たすプログラム。

惑星――生命たちが暮らす『地球』の代名詞

浅界――天国・地獄というあの世へ上る階段の踊り場。

深界――救いも裁きもない、魂の墜ちるところ。

特別措置者(イレギュラー)――地球に発生したバグ的ながん細胞。


ふぅっと彼女はため息をついた。

「お前がそんな顔をする必要は無かろう?
これはわしらの問題だ。お前は気にすることなく日常を送るがいい。」
いつの間にか、千流が後ろにそっと立っていた。

「千流、調べ終わったの?」
「呼び捨てとはな……。ああ、あとはここらの教室ぐらいだ。」

ペタペタと鶴は入っていった。

「ねぇ、」
「なんだ?」

彼女もまた中へと足を踏み入れた。

「どうして、『神官』なんてやってるの?」
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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