其の九十 弱者・欠陥者・悪人に――

文字数 1,143文字

「その子を――助けるつもり?」

身体が吸い寄せられるような、巨大な存在を背中から感じた。
思わず、呼吸することを忘れる。

「蟲を通して見ていたわ。

大した度胸ね。命が惜しくなかったのかしら?」

肉体は激しい打撲痕に裂傷、そしてズタズタに引き裂かれ骨が見え隠れした右肩を

ブラブラと揺らした、早妃フミコは

三島の後ろにそびえ立っていた。





「『困っている人がいたら助ける』

ええ。ええ、ええ。とても素晴らしい言葉だと思うわ。

この惑星はこの舞台は……この世界は困っている人でいっぱいだものぉ……

あなたみたいな

増えてくれれば、苦者が、死者が、多少は減ってくれると思うの。」

三島は相手を刺激させないように、音を立てず、

されど相手の動きを捕らえるため、全神経を視覚及び聴覚に集中させる。


「……そう、ね。こんなこと――平和な世界で暮らしているあなたに言っても意味ないわよね。

不自由なく生きるあなたには。

目の見えるあなたには。

耳の聞こえるあなたには。

言葉を話せるあなたには。

腕のあるあなたには。

足があるあなたには。」

女の目から光が無くなっていく。朱色の眼が徐々に黒ずんでいく。

「そんな健康なあなたが増えてくれれば

助かるの。

弱いヤツが、欠損者がいるから

人って死ぬのよ。」


手にしていた銃にヒビが入る。

「なに……?

弱いから死ぬって言いたいわけ……?」

「そう聞こえなかった?

弱者は生まれながらに弱者。

欠陥者は生まれながらに欠陥者。

悪人は生まれながらに悪人なの。」

息が上がっていくのを感じる。

「メアリーや神官に言ったと思うけど、
私たちの目的は『地球生命体の殲滅』――」

引き金に指を引っかける――

「弱者、欠陥者、悪人――全てを殺す方が手っ取り早いでしょ?

それにそいつらは、世界の足を引っ張る廃棄物――生きる価値すらないわ。」

「そう。

死ね――!!」

二つの銃弾が女の両目を潰した。





「最後に

を映していて正解だった――

もう眼はいらない。

あなたとその子を殺すわ。



自分の命を軽く見る弱者(あなた)

自分を以外を救う救済者(欠陥者)を……」


女の虚空となった両目から涙のように、紫の液体が流れ出る。

胸の部分が大きく肥大化し、生き物のように右肩にうねりだし

「あぁ、ああああああああぁぁぁぁぁああ!!!!!!」

赤と緑の液体をまき散らしながら、黒曜石のような光沢の角が飛び出した。

角の切っ先から紫の液体が糸を引きながら垂れ落ちる。


「あぁうるさい。五月蠅い。ウルサイ。

蟲のようにあたしの耳元で恨み言をつらつらツラツラと。」






(バケモノめ……ッ。なにか、何か手は――


「み、、まさん。手、をかして、ください……!!」

身体の半身を紫色に変色させ、

頭部に至っては、髪の毛はほとんど抜け落ち、眼をただれさせたメアリーが立ち上がろうとしていた。
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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