其の百三 氷椿

文字数 1,135文字

自分がいつから、今の【宮城キョウコ】へとなったのかは自分でも分かっていない。



警察があたりを囲んだときから?

三者面談を行ったとき?

文化祭に参加したとき?

冷夏事件を起こしたとき?

吉田と会ったとき?

人間を失格したとき?

針を刺したとき?

彼と付き合ったとき?

津波に飲まれたとき?


っと考えてももう無駄らしい。

――氷刀が折れた

しっかしこう見ると信じられないわぁ。

地球(惑星)】?を守護する【神官】と戦ってはいるが実感が湧かないため、痛みだけが感じる。

普通だったらこの神官たちが身を守ってくれる存在だったのだろう。
それが星を滅ぼす側に自分が加担して、殺し合いをしてるなんて。

――首元を掴まれ、地面へと叩きつけられ、大動脈を切り付けられる。

驚いた。次元を超える鳥だったり、大嵐を引っ提げて来る犬の神だったり……


『自分の常識で物事を区別しちゃあいけない。
私たちは何も知らないのだから。』


イラつくわ。何をいってもあいつの言葉に私は導かれる。


でも、だからこそ私は、あなたの望む景色も見てみたい……



そのとき、誰かに引かれるように、安心感に満ちた感覚が脳内を支配した――



「なッ……グぅン!!??」
超鳥は焦った。

相も変わらない白く透明な氷刀。
ごく普通に刀身を折ってカウンターを決めてやろうとカツンっと翼に当てた瞬間、
比べ物にならない冷たさがジワリと、しかし確実な殺意を感じたのである。

(な、なんじゃ!?
い、いまの、殺気は???)

今超鳥の頭は、
島も岩もない絶海のなか陽の光の届かない深海まで足を引っ張られるがごとくの焦りを感じていた。

改めて女を見る。
何かが整理されたのか。
左半身にただ分厚く纏った氷がパラパラと落下して、無駄を省き最小限というようになっていた。

そして最大の特徴は、氷刀と共に女の血を吸い込んだのか纏った氷が赤く変色し、
共鳴するように瞳も朱い輪郭を取り始めていた。

(まさか――こやつは完全には力に馴染んでいなかったのか!?
その不完全な状態で儂と相対していたと……!?)

「ふふ、あっははははは。

賢い人ほど遠回りが一番近い道だと理解している。

私に歯ごたえが無いことに一種の警戒感を持ち、思い切り仕掛けてはこなかった
あなたはとても賢い人だった。

おかげ力を扱うコツってモンが分かってきたわ。」

左半身の無機質な氷鎧は赤い氷ドレスへと。
氷刀は宝石を思わせるような鮮やかな赤色へ。
皮膚と髪が引きちぎられた左顔面は、椿を連想させる赤い仮面を。

超鳥は、翼と足の爪、くちばしに明確な戦意を持たせる。

「氷は分かってきた。」

宮城キョウコの右手から手のひらサイズの水の珠が二つ、彼女の周りを衛星のように飛び回り始めた。

「次は水ね」

赤みを帯びた眼が向けられる。

「驕るなよ。メスガキが……!」

突き返すように蒼い瞳が成された。
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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