其の百四十二 12月11日
文字数 2,753文字
警察本部
「これで良いのですか?
これまでの捜査でも彼女は被害者側ですよ…、三島刑事。」
「この島の状況は刻一刻と悪化している、事実である以上、やむを得ないわ。」
カシャんと、刑務所の扉が閉まる。
「しかし、彼女は母親を殺してはいませんし、男に関しては正当防衛です……!」
「目撃者もいない密室でのことよ。証言も何も無い。
それに指紋のついたナイフが見つかった、事情がどうあれ、人殺しに変わりはないもの。」
さっきからの機械みたいな声に苛立ちを覚えた警官は、言い負かしてやろうと三島を睨んだ。
「みや、ぎ……―――。」
「ほんとうに………うるさいわね。」
絶対的な正義と揺るぎない掟――それになされた少女の変革。
三島の耳には、あるいは胸からか、なにもない騒音がひびいていた。
-―――――――――――-―――――――――――
中央病院 屋上
「火ぃいるかい?」
「あんたは、ルシフェルっていったか。」
名前を覚えてもらったことが嬉しかったのか、ルシフェルは浮足立って、鹿島刑事の煙草に火をつけた。
「大変そうだな刑事さん。伊達に警察本部長も兼任しているわけじゃないか。」
「はっ、数年前の上層部が馬鹿しかいなかったせいだ。本部長なんて望んじゃいなかったよ。」
煙草をくゆらせながら、力なく答える。
「聞いたぜ、25区戦線のときのこと。
高校が大火事になった時、現れた化け物どもをたった一人で切り裂いていったってな。
おかげで、住民の被害はほとんどなかったそうじゃないか。」
ルシフェルは裏のない顔で賛辞する。
それに対して、相変わらず鹿島は力なく煙を吐いた。
「切って張ったで何になるってんだ。
何も解決してねぇし、協力者の【久木山レン】は意識不明の重体、【雨宿スイ】に関しては、……。」
宙に浮いた煙が風になびかれて、たわんで消えていく。
(日本刀1本で、町一つを走り回って住民を避難させ百数体の化け物相手しておいて、驕りもないたぁ。
ウチの時代にもアホ国王じゃなくてこんな人間であったらなぁぁ。)
「あんたはなぜ、【救済の代行者】なんてものになった?」
空に向かって思いをはせている時、唐突に刑事から質問される。
「おっと、どうしてそんなことを聞こうと?」
「俺だって40年もダラダラ警官しているわけじゃない。
人を救うってことは簡単じゃない。大抵は何も関われず、口も出せずに置いてかれる。
救済ほど、世間体良いの拷問は無いと思っている。
だが、いまでも俺はわかっていない。そんなものにわざわざ飛びこぶのはヤツらを。」
ルシフェルは、火のついていない煙草をペン回しの要領で回し始めた。
「実際――はは、【人が人を救う】なんてことは傲慢で、自己満足に過ぎねぇ。
病人を前にして、いったいなにを語れる?なにができる?
周りは行動しろ。行動しないと変わらない、なにも救えないというが、アイツらはそれだけいって内容はなにも考えていない。できる実力も持ってないくせにして。」
彼は一息つき、白気だっている山の向こうを見た。
「俺はな――【神】になりたかったのさ。
誰をも救い、誰もが慕う、そんな荒唐無稽な偶像 にな。
刑事さんも…その口だろ?」
右目でウインクして、朗らかに笑った
「は、ハハハハハハハ。」
刑事はお互いの馬鹿さに笑った。
「ルシフェル、お前に頼みたいことがあんだ。
廃墟の11区で、ここ最近多くの人間が出入りしているらしい。それを調べてくれんか?
普通の人間には危険そうでな。」
「お、いいぜ。神官とかいうムカつくヤツより100倍いい。」
ルシフェルは浮足だって階段に足をつけた。
「そうだ。」
「あん?」
「うちの孫娘に、友達を紹介してくれてありがとな。」
「あぁ、早妃の嬢ちゃんもアレだったからな。ユキちゃんが楽しいのならよかったよ。」
-―――――――――――-―――――――――――
11区 深夜 4時
「ウワへへ!
まったく、いくら人間じゃないといってもこんな夜中まで働かせるなんて、ブラック反対ですじゃ。」
「こらぁ!そこサボるんじゃない!!」
「だったら金出せ。」
11区――夏の時期に【メアリー】【犬神】と【サンジョウ】【ペルム】が戦闘した区であり、辺り一面焼け野原になっている廃墟である。
もちろん住民はいない。
だが、いまこの区では軍備が整えられていた。
この会話している連中も住民ではなく、目を朱く染めた手下である。
「まったく人使いが荒い奴らばっかりで。
………どうでもいいけど、前回といい前々回といい話の構成おかしすぎましぇんか。
女の話、、女、女、、いつからこの作品は作者の性癖にまみれたのですかい??」
「ここの作者は大したもんだ。
学園モノ書くつもりが、ここまでの怪文書をいまも書いてるんだぜ。それにつきあわされる俺らも大したもんだ。」
「ちょっと。」
人目を避けて談笑している彼らに、1人の女性が後ろから声を掛けた。
こちらも目を朱く染め、白いワイシャツに黒いタイトスカート、そして魅惑のガーターベルト装着である。
「うわはは!エッッチですじゃ!!」
「別に話題のことはなにもいわないけど、それを演じた本人の前で言わないでくれるかしら。
ちょっと恥ずかしいじゃない。」
さっきからうるさいタコ坊主の背中が凍り付いていく。
「アーーっドМ最高!!美しい大人のお姉さんいいね☆
さすがは宮城さんですじゃ!」
「それで……どうなの?兵士の数と軍備品の質は?」
「えーーっとですね、コンピュータがはじき出したデータによりますと問題はありましぇん。すべて正常ですじゃ。
あとはあなた様の命令で、町の1つ2つ、支配することは難くありません。」
宮城は、うんっと背伸びをして、辺りを見渡す。
戦車に大砲に、ライフル、鉄砲、サーベル、数百人の兵士が目に映る。
「ところで宮城しゃん、どうして三尾アヤカにあんなことを?
あなた様の力が戻ったら、すべて凍らせて終わりでも良かったのでは?」
「………。
最近キスしてなくてね、女の子の味見でもしようかなって。」
「さすがは宮城さん!次はワシの味でもいかがですかな??」
ふとももに絡みついてくるタコ坊主を、氷の彫刻にして部屋のオブジェにすると、彼女は椅子に座った。
「【黒猫】はどうするつもりですか?」
伊達に【朱】じゃないらしい。彫刻にされたのに口周りだけ溶かして、タコ坊主は話しかけた。
「来る確率は――40%といったところね。来てくれれば手間が省ける。
このまま作戦を起こしてもいいけど、猫をそのままにしておくのも寝覚めが悪いわ。
それを片付けて、すっきりした状態で【メインイベント】を迎えたいもの。」
宮城は手のひらで、氷の結晶をクルクルと回し始めた。
バタンとノックも無しに、ドアが開けられる。
「申し上げます。11区の桟橋に黒猫が現れましたぁ!!」
「ダニィ!!」
タコ坊主が彫刻から脱出し、
宮城キョウコは結晶を握り砕いた。
「これで良いのですか?
これまでの捜査でも彼女は被害者側ですよ…、三島刑事。」
「この島の状況は刻一刻と悪化している、事実である以上、やむを得ないわ。」
カシャんと、刑務所の扉が閉まる。
「しかし、彼女は母親を殺してはいませんし、男に関しては正当防衛です……!」
「目撃者もいない密室でのことよ。証言も何も無い。
それに指紋のついたナイフが見つかった、事情がどうあれ、人殺しに変わりはないもの。」
さっきからの機械みたいな声に苛立ちを覚えた警官は、言い負かしてやろうと三島を睨んだ。
「みや、ぎ……―――。」
「ほんとうに………うるさいわね。」
絶対的な正義と揺るぎない掟――それになされた少女の変革。
三島の耳には、あるいは胸からか、なにもない騒音がひびいていた。
-―――――――――――-―――――――――――
中央病院 屋上
「火ぃいるかい?」
「あんたは、ルシフェルっていったか。」
名前を覚えてもらったことが嬉しかったのか、ルシフェルは浮足立って、鹿島刑事の煙草に火をつけた。
「大変そうだな刑事さん。伊達に警察本部長も兼任しているわけじゃないか。」
「はっ、数年前の上層部が馬鹿しかいなかったせいだ。本部長なんて望んじゃいなかったよ。」
煙草をくゆらせながら、力なく答える。
「聞いたぜ、25区戦線のときのこと。
高校が大火事になった時、現れた化け物どもをたった一人で切り裂いていったってな。
おかげで、住民の被害はほとんどなかったそうじゃないか。」
ルシフェルは裏のない顔で賛辞する。
それに対して、相変わらず鹿島は力なく煙を吐いた。
「切って張ったで何になるってんだ。
何も解決してねぇし、協力者の【久木山レン】は意識不明の重体、【雨宿スイ】に関しては、……。」
宙に浮いた煙が風になびかれて、たわんで消えていく。
(日本刀1本で、町一つを走り回って住民を避難させ百数体の化け物相手しておいて、驕りもないたぁ。
ウチの時代にもアホ国王じゃなくてこんな人間であったらなぁぁ。)
「あんたはなぜ、【救済の代行者】なんてものになった?」
空に向かって思いをはせている時、唐突に刑事から質問される。
「おっと、どうしてそんなことを聞こうと?」
「俺だって40年もダラダラ警官しているわけじゃない。
人を救うってことは簡単じゃない。大抵は何も関われず、口も出せずに置いてかれる。
救済ほど、世間体良いの拷問は無いと思っている。
だが、いまでも俺はわかっていない。そんなものにわざわざ飛びこぶのはヤツらを。」
ルシフェルは、火のついていない煙草をペン回しの要領で回し始めた。
「実際――はは、【人が人を救う】なんてことは傲慢で、自己満足に過ぎねぇ。
病人を前にして、いったいなにを語れる?なにができる?
周りは行動しろ。行動しないと変わらない、なにも救えないというが、アイツらはそれだけいって内容はなにも考えていない。できる実力も持ってないくせにして。」
彼は一息つき、白気だっている山の向こうを見た。
「俺はな――【神】になりたかったのさ。
誰をも救い、誰もが慕う、そんな荒唐無稽な
刑事さんも…その口だろ?」
右目でウインクして、朗らかに笑った
「は、ハハハハハハハ。」
刑事はお互いの馬鹿さに笑った。
「ルシフェル、お前に頼みたいことがあんだ。
廃墟の11区で、ここ最近多くの人間が出入りしているらしい。それを調べてくれんか?
普通の人間には危険そうでな。」
「お、いいぜ。神官とかいうムカつくヤツより100倍いい。」
ルシフェルは浮足だって階段に足をつけた。
「そうだ。」
「あん?」
「うちの孫娘に、友達を紹介してくれてありがとな。」
「あぁ、早妃の嬢ちゃんもアレだったからな。ユキちゃんが楽しいのならよかったよ。」
-―――――――――――-―――――――――――
11区 深夜 4時
「ウワへへ!
まったく、いくら人間じゃないといってもこんな夜中まで働かせるなんて、ブラック反対ですじゃ。」
「こらぁ!そこサボるんじゃない!!」
「だったら金出せ。」
11区――夏の時期に【メアリー】【犬神】と【サンジョウ】【ペルム】が戦闘した区であり、辺り一面焼け野原になっている廃墟である。
もちろん住民はいない。
だが、いまこの区では軍備が整えられていた。
この会話している連中も住民ではなく、目を朱く染めた手下である。
「まったく人使いが荒い奴らばっかりで。
………どうでもいいけど、前回といい前々回といい話の構成おかしすぎましぇんか。
女の話、、女、女、、いつからこの作品は作者の性癖にまみれたのですかい??」
「ここの作者は大したもんだ。
学園モノ書くつもりが、ここまでの怪文書をいまも書いてるんだぜ。それにつきあわされる俺らも大したもんだ。」
「ちょっと。」
人目を避けて談笑している彼らに、1人の女性が後ろから声を掛けた。
こちらも目を朱く染め、白いワイシャツに黒いタイトスカート、そして魅惑のガーターベルト装着である。
「うわはは!エッッチですじゃ!!」
「別に話題のことはなにもいわないけど、それを演じた本人の前で言わないでくれるかしら。
ちょっと恥ずかしいじゃない。」
さっきからうるさいタコ坊主の背中が凍り付いていく。
「アーーっドМ最高!!美しい大人のお姉さんいいね☆
さすがは宮城さんですじゃ!」
「それで……どうなの?兵士の数と軍備品の質は?」
「えーーっとですね、コンピュータがはじき出したデータによりますと問題はありましぇん。すべて正常ですじゃ。
あとはあなた様の命令で、町の1つ2つ、支配することは難くありません。」
宮城は、うんっと背伸びをして、辺りを見渡す。
戦車に大砲に、ライフル、鉄砲、サーベル、数百人の兵士が目に映る。
「ところで宮城しゃん、どうして三尾アヤカにあんなことを?
あなた様の力が戻ったら、すべて凍らせて終わりでも良かったのでは?」
「………。
最近キスしてなくてね、女の子の味見でもしようかなって。」
「さすがは宮城さん!次はワシの味でもいかがですかな??」
ふとももに絡みついてくるタコ坊主を、氷の彫刻にして部屋のオブジェにすると、彼女は椅子に座った。
「【黒猫】はどうするつもりですか?」
伊達に【朱】じゃないらしい。彫刻にされたのに口周りだけ溶かして、タコ坊主は話しかけた。
「来る確率は――40%といったところね。来てくれれば手間が省ける。
このまま作戦を起こしてもいいけど、猫をそのままにしておくのも寝覚めが悪いわ。
それを片付けて、すっきりした状態で【メインイベント】を迎えたいもの。」
宮城は手のひらで、氷の結晶をクルクルと回し始めた。
バタンとノックも無しに、ドアが開けられる。
「申し上げます。11区の桟橋に黒猫が現れましたぁ!!」
「ダニィ!!」
タコ坊主が彫刻から脱出し、
宮城キョウコは結晶を握り砕いた。