其の百十四 24区戦線の後処理 【浅界】
文字数 2,167文字
――特別措置者№5、チクシュ・ルーブ。その隕石によって、懇切丁寧に育て上げた恐竜たちが絶滅し、
光さえも透き通るような、髪も服も白い女が歩を進める。
――そしてこの【西暦2021】もまた、それを繰り返している。
まったくいつの世も殺し続けないと気は済まないのですね。
宮殿の奥に壊れないようそっと置かれた大きな椅子にもたれかかる
――この【シネスティア】の、苦手、とすることは己の思い通りに進まぬことです。
それが己が部下であれ子供であれ、首をはねます。
左手で頬杖をつき、顎をあげて、溺れるような瞳を以て、4体の神官と2人の代行者を視界に映らせた。
「【国造り】万樹――異論なく。」
「【浄天】千流、異論なく。」
当然の様に、老人のようなしわがれた声で、亀と鶴は返答した。
「ごほ、、【多次元】超鳥、、異論なくば……。」
「【大神】犬神、異論ありません……。」
吐血しながらは一般サイズに戻った超鳥、勝手がわからずとりあえずの敬語は犬神、
「………。」
「チッ、これだから神とか言ってる奴は嫌いなんだ。」
中学校制服から黒いスーツに衣替えしたのは沈黙のメアリー。
舌打ちしたのは、服が返り血で汚れた神嫌いのルシフェル。
「フフ、あまり毛嫌いしないで。楽しくなるでしょう……。
さぁ、まずはこの私に、状況の説明をなさい。簡潔にお願いしますね。」
万樹は咳払いをして、一歩前へ出た
「――はい。まずは【西暦2021年】と申されましたが、シネスティア様が肉体を失って6000万年以上経過されています。
№5のルーブは完全消失し、――2019年まで細々とした【例外】はあれど【特別措置者】に至る者はおりませんでした。。」
「……では、今の問題や事件は2020年から、起こり始めたと。」
「おっしゃる通りです。
実のところ2020年の12月において、万樹に仕える秘書が行方不明になっておりまする。
おそらくそのあたりから、動き始めたかと……。」
次に声をあげたのは千流。
「その翌年の8月に、この【メアリー】とともに、長崎の【五十ノ島】にて調査してまいりました。
そこで調査した【24区校】においてとあるUSB を発見しました。まぁ大した成果は上げられませんでしたが……。」
「ふむ……。メアリー……?であったな。お前はどう感じたのだ?」
急な名指しにとまどいを混ぜながら、メアリーは口を開いた。
「正直……よく、、わかりません。。
わざわざUSBをおいてヒントを与えた理由も
動きが見られて、【冷夏事件】が起きるまで8か月の間があった理由も。
計ったように敵が撃退態勢をとれた理由も。
そもそも、敵の正体も……
私は、その、9月末に犬神さんと戦闘に参加したのですが、、、、、」
メアリーは迷ったのか言いよどむ
「構いません。役立つものであれ、立たないものであれ、発言を許可します。」
女王のような余裕かつ威圧におされ、彼女は一呼吸をはさんで話し始めた。
「【早妃】と名乗った二人と戦ったのですが、
『私たちは、役者にすぎないわ。台本どおりの動きとセリフ――それ以上のこともそれ以下のことも求められない。死ねと言われれば死ぬし。殺せと言われたら殺す。どんな奴であろうとも。』
まるで、自分たちはただの駒と語ったのです。」
内容に反応するよう、周りの神官は彼女の方に目を向けた。
「私からもよろしいでしょうか?」
重ねる感じに犬神が声をあげ、女王は頷いた。
「万樹殿、千流殿、超鳥殿は【浅界】にて観戦していたので分かるかもしれませんが、
目標である二人は、
私、に? メアリーは目をぱちくりさせる。
千流は耳を澄ませた。
「私であれば、眼前にけた違いの敵が現れた場合、味方と協力して逃走を図ります。
しかし目標は、片や私を足止めさせ、片やメアリーを殺しに向かいました。」
「そ、それは、私が【救済の代行者】だから、では……?」
犬神は肩の力を抜くためにため息をつく
「メアリー、お前の受けた毒は並みのものではなかった。当時のお前は肉体さえ溶けかかっていたほどだ。
あのまま放っておけば絶命するのは目に見えていた。それを
それも力を扱った張本人がな。」
「は……ぁ……」
メアリーは押し黙った。
「超鳥、ルシフェル、お前たちはつい先ほどまで24区で戦闘を行ってきたばかりだ。
気付いたことはないか?」
万樹の声に、超鳥はビクリと体を震わせ、ルシフェルは嫌味ったらしく眼光を鋭くさせた。
「あぁ、氷漬けにされていた鳥ではないですか。全く、いつからこんな軟弱者を神官に取り入れ始めたのですか?」
椅子に掛かった3mほどの、黒と水色で装飾された杖を手に取り、超鳥に向ける
「も、申し訳ありませんっっ!!」
シネスティアの声に、超鳥は汗だくの土下座をした
「貴様以外にも代わりはいるのですよ?
油断してやられたのであれば、【多次元】の冠位は剥奪より他はありませんね。」
「お、お待ちをッッ、ごふ、、決してっ、決してっっ!!油断はしておりませぬ!!」
床に血を散らしながら超鳥は叫ぶ。
「では、それ相応の理由があるのですね?」
自分の考えを懸命に伝えるべく、血走った眼でシネスティアと目を合わせた。
「我らの敵は、あなた様の
あらゆる
生命体が死に絶えました。光さえも透き通るような、髪も服も白い女が歩を進める。
――そしてこの【西暦2021】もまた、それを繰り返している。
まったくいつの世も殺し続けないと気は済まないのですね。
宮殿の奥に壊れないようそっと置かれた大きな椅子にもたれかかる
――この【シネスティア】の、苦手、とすることは己の思い通りに進まぬことです。
それが己が部下であれ子供であれ、首をはねます。
左手で頬杖をつき、顎をあげて、溺れるような瞳を以て、4体の神官と2人の代行者を視界に映らせた。
「【国造り】万樹――異論なく。」
「【浄天】千流、異論なく。」
当然の様に、老人のようなしわがれた声で、亀と鶴は返答した。
「ごほ、、【多次元】超鳥、、異論なくば……。」
「【大神】犬神、異論ありません……。」
吐血しながらは一般サイズに戻った超鳥、勝手がわからずとりあえずの敬語は犬神、
「………。」
「チッ、これだから神とか言ってる奴は嫌いなんだ。」
中学校制服から黒いスーツに衣替えしたのは沈黙のメアリー。
舌打ちしたのは、服が返り血で汚れた神嫌いのルシフェル。
「フフ、あまり毛嫌いしないで。楽しくなるでしょう……。
さぁ、まずはこの私に、状況の説明をなさい。簡潔にお願いしますね。」
万樹は咳払いをして、一歩前へ出た
「――はい。まずは【西暦2021年】と申されましたが、シネスティア様が肉体を失って6000万年以上経過されています。
№5のルーブは完全消失し、――2019年まで細々とした【例外】はあれど【特別措置者】に至る者はおりませんでした。。」
「……では、今の問題や事件は2020年から、起こり始めたと。」
「おっしゃる通りです。
実のところ2020年の12月において、万樹に仕える秘書が行方不明になっておりまする。
おそらくそのあたりから、動き始めたかと……。」
次に声をあげたのは千流。
「その翌年の8月に、この【メアリー】とともに、長崎の【五十ノ島】にて調査してまいりました。
そこで調査した【24区校】においてとあるUSB を発見しました。まぁ大した成果は上げられませんでしたが……。」
「ふむ……。メアリー……?であったな。お前はどう感じたのだ?」
急な名指しにとまどいを混ぜながら、メアリーは口を開いた。
「正直……よく、、わかりません。。
わざわざUSBをおいてヒントを与えた理由も
動きが見られて、【冷夏事件】が起きるまで8か月の間があった理由も。
計ったように敵が撃退態勢をとれた理由も。
そもそも、敵の正体も……
私は、その、9月末に犬神さんと戦闘に参加したのですが、、、、、」
メアリーは迷ったのか言いよどむ
「構いません。役立つものであれ、立たないものであれ、発言を許可します。」
女王のような余裕かつ威圧におされ、彼女は一呼吸をはさんで話し始めた。
「【早妃】と名乗った二人と戦ったのですが、
『私たちは、役者にすぎないわ。台本どおりの動きとセリフ――それ以上のこともそれ以下のことも求められない。死ねと言われれば死ぬし。殺せと言われたら殺す。どんな奴であろうとも。』
まるで、自分たちはただの駒と語ったのです。」
内容に反応するよう、周りの神官は彼女の方に目を向けた。
「私からもよろしいでしょうか?」
重ねる感じに犬神が声をあげ、女王は頷いた。
「万樹殿、千流殿、超鳥殿は【浅界】にて観戦していたので分かるかもしれませんが、
目標である二人は、
メアリーに対して執拗な殺意を持ってるように感じました
。」私、に? メアリーは目をぱちくりさせる。
千流は耳を澄ませた。
「私であれば、眼前にけた違いの敵が現れた場合、味方と協力して逃走を図ります。
しかし目標は、片や私を足止めさせ、片やメアリーを殺しに向かいました。」
「そ、それは、私が【救済の代行者】だから、では……?」
犬神は肩の力を抜くためにため息をつく
「メアリー、お前の受けた毒は並みのものではなかった。当時のお前は肉体さえ溶けかかっていたほどだ。
あのまま放っておけば絶命するのは目に見えていた。それを
わざわざ
トドメを刺しに行くかって話だ。それも力を扱った張本人がな。」
「は……ぁ……」
メアリーは押し黙った。
「超鳥、ルシフェル、お前たちはつい先ほどまで24区で戦闘を行ってきたばかりだ。
気付いたことはないか?」
万樹の声に、超鳥はビクリと体を震わせ、ルシフェルは嫌味ったらしく眼光を鋭くさせた。
「あぁ、氷漬けにされていた鳥ではないですか。全く、いつからこんな軟弱者を神官に取り入れ始めたのですか?」
椅子に掛かった3mほどの、黒と水色で装飾された杖を手に取り、超鳥に向ける
「も、申し訳ありませんっっ!!」
シネスティアの声に、超鳥は汗だくの土下座をした
「貴様以外にも代わりはいるのですよ?
油断してやられたのであれば、【多次元】の冠位は剥奪より他はありませんね。」
「お、お待ちをッッ、ごふ、、決してっ、決してっっ!!油断はしておりませぬ!!」
床に血を散らしながら超鳥は叫ぶ。
「では、それ相応の理由があるのですね?」
自分の考えを懸命に伝えるべく、血走った眼でシネスティアと目を合わせた。
「我らの敵は、あなた様の
姉君にあたる
――【惑星】ではござりませんか!!??」