其の六十六 星の子供たち

文字数 1,312文字

浅界――ある礼拝堂

「先の報告は間違い無いのか?」

「はい。俺と超鳥であちらこちらと調査したところ、浅界から『代行者』が遣われた形跡はありませんでした。カルト教団や悪徳組織もすべて調べましたが、まったく……。」

最前列の席より白犬――犬神は、老亀である万樹に調査報告を行っていた。

万樹は顔をしかめて、
「五十ノ島で起こった虐殺事件、あれほどまでの無慈悲な行為は、動物であれ人間であれそうできるものではない。鶴が警察たちから聞き出した情報である『朱い目』……、間違いなく代行者じゃと思うんだが……。」
情報を整理するように、言葉をつづった。

「犬神の言ってることは本当だ。」
礼拝堂の入口からバサバサと鶴が飛び込んで、万樹の前に降り立った。
「儂の秘書たち、部下たちにも確認をとってみたがそんな経歴はなかった。わが母の妹君である『お月様』にも連絡をとったが、儂らと共に遣わせた『救済』の彼女ただ一人しか送っておらん。」
「ふむ――この歪みは事実だ。なにか対策をたてねば、アレ(冷夏事件)以上の犠牲になるのは確実じゃ。」
「……。」
犬神は、場の結論を見るためにじっと二人を見つめる。




「最近は、『獣事件』という人間が食い荒らされることも起きとる。」
千流は万樹の目を見て、
「これ以上、イタチごっこが続くのであれば、

ことも検討しろ。万樹。」
「……」
「!?――待ってください!!それは早計ではないですか千流殿!!」
取り乱す犬神を、鶴は針のように細く鋭い眼光を向ける。
「たしかにこのまま調べ続けてもあまり成果は出ない感じではありますが、かといって生きている生命もろとも特別措置者(イレギュラー)を殺すのは、あまりに早すぎると思います!!」

犬の訴える声が堂内に響く。
しかし、鶴の目はより一層鋭くなっただけであった。

「犬よ、貴様も神官ならば知ってるだろ。そうやって、時間ばかり消費し続けて、何を救うことができた?
400000000年前の『オルドビス』
300000000年前の『デボン』
200000000年前の『ぺルム』
100000000年前の『サンジョウ』
66000000年前の『チクシュルーブ』
我らより前の神官たちは、慎重に気を付けすぎたばかりに――生命の90%の絶滅という危機に何度もさらされてきた来た!」
「――」
「……」
絶句する犬に、見守り続ける亀。
「あの島の人口はたかだか、3万人であろ?早急に手を打ったところで

にしかならん。」
「そ、それは――」
「もうよい。」
重々しく万樹は口を開いた。
「理にかなった冗談はやめろといってるだろ。千流。
犬神よそのような顔をするな。今のは悪い冗談じゃ。
神官は『地球生命(星の子供たち)』の存続のために『惑星(地球)』に仕える組織。
最善を尽くして、生命を守る義務ある。」

「ふん……」
千流は、ばつがわるそうにそっぽを向いた。



「ん、ん。報告を一つ宜しいですかな?」

いつのまにか二階のキャットウォークの手すりに真っ黒なカラス――超鳥が見下ろしていた。


「構わん。報告とはなんじゃ?」
「千流殿が関係を作ってくれた、45区警察本部に伺ってきましたが、一つ新しいことが分かったみたいで、
冷夏事件を起こした暴走車のハンドルについた指紋は、

ということみたいです。」
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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