其の二十九 『強さ』『誇り』『魅力』

文字数 806文字

 「『強さ』だと……?」
 砂利と砂だらけの地面に膝立ちし、顔を俯かせたまま吉田は聞いた。
 「短いやり合いだったが、その小せぇ体の割にタフさも、パワーも段違いだった。そういうヤツに限って必ず『動機』ってもんがありやがる…。『動機』あってこその『魅力(カリスマ)』、『誇り』、『強さ』を引出せるのさ。」
 カイは淡泊にそう言った。吉田の方向を見ながら全く別の人間を見据えて。
 「『動機』ってのは、自分を知らん奴には存在し得ないモンだ。……あの女のようにな。」
 「あの女……、それは大浜ナオミのことか?」
 「その通りだ。あの女は、『動機』も何も知らずに、ふざけたことを言いやがったからな。――試してみたが、案の定弱いヤツだったしな。」
 「………。」
 ガリガリと吉田はひっきりなしに地面を手でいじる。
 それを特に気にも留めず、カイは拳を振り上げた。
 「喋りはここまででいいだろう。吉田ミョウ、お前は『強さ』を持っていた。滅多にお前のようなやつには出会えんが、少しは楽しめたぜ。」
 別れの言葉のように、静かに告げ躊躇なしに振り下ろした。


 「なんちゃって――!!!」
 「なッッ――!?」
 カイの拳があたる直前に、吉田はカイの目にめがけて、手に集めていた砂利や砂を放り投げた。
 「吉田!!なにをっ――!!?」
 咄嗟のことに何が起こったのか分からず、目に突き刺さる痛みに耐えかねたカイに、膝蹴りがズッシリと圧し掛かった。
 「きゅ、窮鼠猫を噛むってやつだ……カイ…。よく聞きやがれ、貴様は確かに強い人間だ…。だ、だがな、不意打ちで貴様が死ねば

なんだぜ……。勝った方が

なんだ……。よく覚えとけや……――」
 してやったりと笑みを浮かべたあと、仰向けで吉田は倒れ込んだ。
 風と波の音がより一層大きく聞こえてきた。
 「………」
 目と腹の痛みに体が軋みながらも、カイは吉田を見下ろした。
 どこか空しそうな、またはどこか寂しそうな顔をして――
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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