其の三十八 鹿島刑事、雨宿スイ、諫早ナナ
文字数 1,116文字
「――それじゃあ、この馬鹿どものことを任せるぞ。」
「はッ!ご苦労様です!鹿島刑事!!」
鹿島と呼ばれたオヤジ刑事は、駐在所に不良グループを預けるとスイとナナの乗る車へと戻った。
「待たせたなお前ら。」
リアシートにのる二人に声をかける。
少年は頬杖して落ちた目を以て窓の外を見やり、
少女は、刑事の車に乗っていることか、男子が隣に座っていることか――ともかく緊張した様子だった。
「意外に早く終わりましたね。」
「当たり前だ。これが俺たち警察の専門だ。」
「それはとっても頼りになりますよ。」
少女――諫早ナナにとってスイの吐く言葉に全て戦慄を覚えた。
今こうして刑事と軽快なトークを交わしているが、その落ちた目を見ていると皮肉しか聞こえないのである。
車内にある時計を覗いてみる。
「18:44」
ぼんやりとオレンジ色をした数字が教える。
文化祭の準備をして、ふらっとコンビニに寄ったらまさかあんなことになるとは想定外。
男たちと絡まれたと思ったら、隣にいる雨宿スイに助けられ、何とかしようしてたら前にいる鹿島刑事に出会って。
おまけにそれらは全部三時間以内の出来事。
ナナはため息を付く。
彼女からしたらまる二日行動した気分になっているのだ。
「――ほらぁナナちゃんも疲れて、ため息をついてるじゃないすかぁー」
「えっ⁉」
突然自分の名前が出てきたためナナは意を突かれた。
「あぁん?疲れた時こそ飯を食いに行くべきだろう⁉」
ドスンとスイは背もたれに腰掛けた。
落ちた目は、いつしか普通の男子の呆れた目に戻っていた。
「あーー、うちの親父にそっくり~~」
天井をみやげながらだらしなく愚痴をこぼす姿は、とても夕方の人物と同じとは思えなかった。
頭に包帯を巻いて片腕は骨折してる状態でありながら、あの惨状は……。
「――えっと、これは……?」
「ん?それがね~、鹿島さんがレストランに連れて行ってくれるんだって。」
スイが運転席に目を向ける。
「っていうかなんで、そこまでしてくれるんですか?」
「愚問を言うな。若い人間に尽くすのは老人たちの役割だ。」
シンっと静まりかえった空気のなかで、スイはナナに視線を戻した。
視線に気づき、彼女は体を強張らせる。
「――諫早ナナちゃん可愛いですからね。」
「分かってるじゃないか!!雨宿!!――あ」
再びスイは天井をみやげた。
「うわぁ、思考回路うちの先輩と同じ~」
「やりやがったな!クソガキぃぃ!!」
推定60代の刑事と自分と同じくらいの学生、二人の会話が男子高校生にじみていて、彼女の胸をくすぐる結果になった。
「さぁ、ついたぞ。うちの娘が紹介してたレストラン『トミエ』だっ!」
「はッ!ご苦労様です!鹿島刑事!!」
鹿島と呼ばれたオヤジ刑事は、駐在所に不良グループを預けるとスイとナナの乗る車へと戻った。
「待たせたなお前ら。」
リアシートにのる二人に声をかける。
少年は頬杖して落ちた目を以て窓の外を見やり、
少女は、刑事の車に乗っていることか、男子が隣に座っていることか――ともかく緊張した様子だった。
「意外に早く終わりましたね。」
「当たり前だ。これが俺たち警察の専門だ。」
「それはとっても頼りになりますよ。」
少女――諫早ナナにとってスイの吐く言葉に全て戦慄を覚えた。
今こうして刑事と軽快なトークを交わしているが、その落ちた目を見ていると皮肉しか聞こえないのである。
車内にある時計を覗いてみる。
「18:44」
ぼんやりとオレンジ色をした数字が教える。
文化祭の準備をして、ふらっとコンビニに寄ったらまさかあんなことになるとは想定外。
男たちと絡まれたと思ったら、隣にいる雨宿スイに助けられ、何とかしようしてたら前にいる鹿島刑事に出会って。
おまけにそれらは全部三時間以内の出来事。
ナナはため息を付く。
彼女からしたらまる二日行動した気分になっているのだ。
「――ほらぁナナちゃんも疲れて、ため息をついてるじゃないすかぁー」
「えっ⁉」
突然自分の名前が出てきたためナナは意を突かれた。
「あぁん?疲れた時こそ飯を食いに行くべきだろう⁉」
ドスンとスイは背もたれに腰掛けた。
落ちた目は、いつしか普通の男子の呆れた目に戻っていた。
「あーー、うちの親父にそっくり~~」
天井をみやげながらだらしなく愚痴をこぼす姿は、とても夕方の人物と同じとは思えなかった。
頭に包帯を巻いて片腕は骨折してる状態でありながら、あの惨状は……。
「――えっと、これは……?」
「ん?それがね~、鹿島さんがレストランに連れて行ってくれるんだって。」
スイが運転席に目を向ける。
「っていうかなんで、そこまでしてくれるんですか?」
「愚問を言うな。若い人間に尽くすのは老人たちの役割だ。」
シンっと静まりかえった空気のなかで、スイはナナに視線を戻した。
視線に気づき、彼女は体を強張らせる。
「――諫早ナナちゃん可愛いですからね。」
「分かってるじゃないか!!雨宿!!――あ」
再びスイは天井をみやげた。
「うわぁ、思考回路うちの先輩と同じ~」
「やりやがったな!クソガキぃぃ!!」
推定60代の刑事と自分と同じくらいの学生、二人の会話が男子高校生にじみていて、彼女の胸をくすぐる結果になった。
「さぁ、ついたぞ。うちの娘が紹介してたレストラン『トミエ』だっ!」