其の三十四 死にぞこない

文字数 677文字

 教室中に打ち付ける水の音と、吉田の陽気な声が響き渡る。
 「んんふふふはははは、派手にやってくれたな。」
 砕けたガラスと転がった椅子を、時折振り向きながら、墨汁のような液体をかき混ぜる。
 「すみません……、物に、当たって、しまいました。」
 顔を俯かせながらカズミはボソボソと話す。
 「いいよいいよ、むしろ賢いと言える。自分に当たるよりはね。」
 「……」
 「それにこんなモンは経費で、なんとかなる。」
 カズミは床をみつめる。
 「ちょろまけせば、なんとかなるんだよ。」
 シンのやつおこらないかな?
 「やっぱり――」
 「ええい!そこに座れぇ!二杯目のコーヒーだ。次はじっくり味わって飲み込め‼」
 彼女の座っている席にカンっと置くと、吉田はゴミ箱に向かった。


 「どうして……、先輩は、笑っていられんですか――?」
 耳をつんざく音を、破片が奏でる。
 「先輩も、先輩もなのでしょう⁉突然家族を失って――なんで、なんで笑っていられるんですか!!?」
 過去の真偽など彼女にはどうだってよかった。ただ、笑っていられる彼には、得たいの知れなさを感じ始めたのだ。
 「どうして、なのですか。」
 そして自分と同じであることを密に願った。
 「それは、もちろん、」
 エンターテイナーのように吉田は、箱をとじて、彼女に向かって歩き出した。
 「オレは勝手に死んでいった連中に感じるものなんて無いからな。」
 カズミの瞳に、白い歯を突き出した彼が映る。
 「ははは、まぁほら、君は亡くしたばかりだ。――時間はまだある。

?」
 吉田は彼女の白い眼帯を見ながら笑みを浮かべた。
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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