其の二十五 会長からの応答……
文字数 1,061文字
「生徒会を作ったのが吉田先輩で――私達が入らせられた――?」
コクんとシンは頷く。
「ど、どういうことですか⁉会は……役員は生徒会長が選んだのではないんですか⁉」
信じられないという顔でアヤカは聞き返す。
アヤカにとってその事実は、己の誇りを害するものに他ならないからだ。
生徒を代表する会長に、『副会長』という席を任せられたのは光栄なことであった。しかしそれは、つい先日まで『蟲』だと見下していた『吉田ミョウ』のお膳立てだとするならば、彼女にとってこれ以上ないくらいに屈辱なのである。
「じゃあ、会長も先輩に……?」
「いや…僕はもともと、生徒会長を目指していた。」
「それじゃあ、どうして私達だけ……」
シンは大きく深呼吸をした。
「交換条件だった……」
アヤカは呆然とした瞳でシンの口を見つめる。
「僕を生徒会長にする、代わりに役員は吉田が決め、
いつものハリのある声は無い。干ばつした河のような、乾ききったその声は、応答というより懺悔を思わせた。
「すまない……
最低。
そう言えれば簡単だった。
会長への印象を。
彼女自身の行動の正当化を。
『何をしてでも、自分の理想に近づく。』
彼女は、脳の内底にへばりついた、自らの悪性を再認識した。
故に会長を――彼を批難することを一瞬、躊躇った。
しかしそれは、
彼女は頭を下げるシンの前に手を差し出した。
彼は困惑した表情をかたどっている。
「私…まだ謝りきれてないんですよ。吉田先輩にもサキにも、暴力を振るったのに。なのにあの人たちは、いつも通りに接してくるんです。こんな私にも……。
ごめんなさいって、保育園児にもできるのに、プライドばかり高くなっちゃって謝ることさえできなくって――最低なのは私もだったんです。」
アヤカは苦い笑顔を浮かべた。
「――だからせめて、最低な者どうし、手を取り合いましょう?」
「アヤカ……ありがとう。」
「ど…ういたしまして。」
シンは希望にすがるように、彼女の手を掴んだ。
二人して同じ笑顔をしてみせた。
それは決して、ひきつった硬い笑顔ではない。
自分たちが悪人だと理解した上で進む覚悟を決めた顔――であることだろう。
夜の帳が展開された。
その奥の奥にある金色の物体は、眩しい月光をふらせている。
それは希望を抱かせる母のごとき優光 か。
それとも悪を糾弾する父のごとき厳光 か。
コクんとシンは頷く。
「ど、どういうことですか⁉会は……役員は生徒会長が選んだのではないんですか⁉」
信じられないという顔でアヤカは聞き返す。
アヤカにとってその事実は、己の誇りを害するものに他ならないからだ。
生徒を代表する会長に、『副会長』という席を任せられたのは光栄なことであった。しかしそれは、つい先日まで『蟲』だと見下していた『吉田ミョウ』のお膳立てだとするならば、彼女にとってこれ以上ないくらいに屈辱なのである。
「じゃあ、会長も先輩に……?」
「いや…僕はもともと、生徒会長を目指していた。」
「それじゃあ、どうして私達だけ……」
シンは大きく深呼吸をした。
「交換条件だった……」
アヤカは呆然とした瞳でシンの口を見つめる。
「僕を生徒会長にする、代わりに役員は吉田が決め、
観客用
としての7席を設ける、そういう手筈だった。」いつものハリのある声は無い。干ばつした河のような、乾ききったその声は、応答というより懺悔を思わせた。
「すまない……
最低
なのは僕の方なんだ……。」最低。
そう言えれば簡単だった。
会長への印象を。
彼女自身の行動の正当化を。
『何をしてでも、自分の理想に近づく。』
彼女は、脳の内底にへばりついた、自らの悪性を再認識した。
故に会長を――彼を批難することを一瞬、躊躇った。
しかしそれは、
自分もまた同じ存在である
、ということの何より証明に他ならなかった。彼女は頭を下げるシンの前に手を差し出した。
彼は困惑した表情をかたどっている。
「私…まだ謝りきれてないんですよ。吉田先輩にもサキにも、暴力を振るったのに。なのにあの人たちは、いつも通りに接してくるんです。こんな私にも……。
ごめんなさいって、保育園児にもできるのに、プライドばかり高くなっちゃって謝ることさえできなくって――最低なのは私もだったんです。」
アヤカは苦い笑顔を浮かべた。
「――だからせめて、最低な者どうし、手を取り合いましょう?」
「アヤカ……ありがとう。」
「ど…ういたしまして。」
シンは希望にすがるように、彼女の手を掴んだ。
二人して同じ笑顔をしてみせた。
それは決して、ひきつった硬い笑顔ではない。
自分たちが悪人だと理解した上で進む覚悟を決めた顔――であることだろう。
夜の帳が展開された。
その奥の奥にある金色の物体は、眩しい月光をふらせている。
それは希望を抱かせる母のごとき
それとも悪を糾弾する父のごとき