其の二十三　生徒会室　強襲‼

　「邪魔するぜぇ。」
　のっそりと、さも当然のようにカイは生徒会室へと入ってきた。
　その作法があまりに自然であったため、スイとアヤカはその場から動かなかった。
　「アヤカちゃん、下がって―！」
　一瞬早く動けたスイは彼女の腕をとって距離を取った。
　「んん？傷つくねぇ。」
　楽しそうに笑みを浮かべてカイは言う。
　「さて、まさに優等生って感じじゃないか。久木山レン？」
　「……。何の用かしら、カイ。私とあなたで話すことなどないはずよ。」
　「取り付く島もなくなっちまってるとは……。お前のようなやつが、どうしてここに居るかのか気になったんだよ。」
　スイとアヤカをよそ目に、ハチミツに疑問を問うカイ。
　「俺からすりゃあ、お前はこんな――良い子ちゃんを演じれるタイプだったのか？」
　「スイにも話したけど、区切りをつけたからここへと入ったのよ。」
　冷気が場を支配していく。
　「あなたと違って大人なのよ。」
　机においたプリントとホッチキスを手に取ってパチンと留める。
　「そうか。俺はガキだからな、お前の言う考えはわからねぇか。邪魔をしたな。」
　二人の会話が終わったと同時に、耳を支配する轟音が木霊した。
　その音にたまらずアヤカはスイにしがみ付く。
　「ッ―！いきなり、やってくれるじゃない‼あいさつ代わりってわけ⁉」
　日程表が張られたホワイトボードが派手に倒れる。
　「フン、これさえ受け止めれないヤツに会いに来る価値はないからな。」
　右腕をカイは静かに戻し、ハチミツを一瞥する。
　「……。」
　両腕でガードはしたものの相当な痛みらしい。ハチミツは若干顔をしかめる。
　「吉田にも会っていきたかったが、ここにはいないらしいからな。」
　踵を返して扉に近づいていくなか、カイは小動物のようにおびえた表情を浮かべる二人に目をやったが、興味はないのか反応もしなかった。
　「吉田に会う？カイあなた、やるつもり――！？」
　その言葉に二人はハチミツのほうを振り返った。
　「――いまから二週間後の7月25日、夏に入る終業式がある日だ。大きな区切りとしては丁度良い日だろ。」
　扉の方向をジッと見たまま答えると、カイは堂々と去ってしまった。