其の八十五 神官・犬神=大神

文字数 1,594文字

特別措置者№3ぺルム――その力を持つ『早妃フミコ』。猛毒をまとった巨大触手、その触手から作られた巨大昆虫の攻撃より『メアリー』は成すすべなく倒れてしまう。

その戦いを関心しながら『早妃ショウゾウ』は静かに見守っていた。
「俺との戦ったときから、あいつの体はボロボロだった。内臓は溶け落ちてあれほどの大やけどを負って……その状態でフミコと戦ったのだ。良く持ったと褒めたいところだぜ。」

早妃フミコが手刀を作り、メアリーの首元に近づけていく。

。この体たらくではな。」




「過信は良くないわ。犬神に助けを求めれば良かったのに、あなたは頑なに一人で向かってきた。甘えられないのもまた弱さ。これじゃあ……生前の過ちを繰り返しているだけじゃない。」

「ぉえ………」

メアリーの口から血の混じった吐しゃ物が、水たまりの様にじっとりと焼野原になった大地に広がる。


「さようなら、誰よりも人から求められた哀れな子よ。」

湿気た言葉を以て女は手刀を放った。




…………


…………………


「……あなたが帰ってきたとなると、無事ではすまないわよねぇ。」

フミコは

右腕を確認しながら、後方をチラリと覗き見た。

「貴様ら産業廃棄物なぞに、我らが屈するとでも?」


一切の穢れの無い真っ白な体毛

背中に少女を乗せ

口に女の右腕をくわえた『犬神』が全身を体毛を逆立てながら佇んでいた。




フミコはメアリーのいた場所に目をやる。
(あの一瞬で、彼女を背中に乗せて私の腕を噛み千切っていくなんて……)
嬉しそうに笑みを作る。
「なにも代行者任せってわけじゃなさそうね。」

「大丈夫か?」
ショウゾウが歩みよって声を掛けた。
「大胆に持っていかれたな。これはまた。」
フミコのズタズタになった切断面を見ながら感想を言う。
「フフ、でも嬉しい。あの子にこんな仲間がいるなんて。おかげでワクワクしてきたわ。」

腕が無くなっていることは気にしていないのか、二人して微笑みながら神官である犬神に視線を移した。



「……ぬ…がみ…さん。ごほ……刑事、さんは、?」
「桜刑事なら安全場所に運んだ。お前は自分の事を気にしていろ。」
それを聞いて安心したのか、メアリーは意識を手放した。

犬神はその顔を脳裏の焼きつけて、二人の特別措置者を睨みつけた。


「俺たち二人とやり合おうっていうのか?」
「貴様らに対して疑問が尽きることは無いが……、それは殺した後で調べても構わんだろう?」

パきパキと、音をならしながら犬神の骨格がみるみる変わっていく。

「それは嬉しいだけれど、あなたの後ろにいる子に被害が及んじゃうんじゃない?」
フミコは後ろにいる少女を指をさす。
「フン、なら場所を変えようか。」


そういうと犬神は息を大きく吸った。

胸元が山の様に膨らみ



全てを吹き飛ばすように、前方に咆哮を履き散らした。


――――



―――――――



川の音、虫の鳴き声、動物たちの悲鳴、特別措置者の驚声……あまねく音が犬神によってかき消されていく。




「ガッ……ああ!?クソ!!?あた、まがグワングワンいい、やがる!!!」

「これは……!!?やだやだ!!??図り間違えちゃったかしら!???」


二人は、牛神の石像がある神社まで吹き飛ばされていた。

そして、先程の咆哮のせいか一種の混乱状態に陥ってるように思える。


その二人の付近に影が覆う。



ズンっと地面が隆起し、


その反動で神社の小屋が倒壊し、木々を巻き込み石像を巻き込みながら土砂崩れが起きる。


「はぁはぁ……クハハハハハ……!!これが神官ってやつか……!」

土埃の隙間から、真っ白な剛牙が覗かせる。

「フフ…いいわねぇ……!!」

全長15メートルを超えた、鋼鉄を思わせる筋肉が


大空と大海を象徴するような、瑠璃色の瞳が二人を捉える。


『メアリーの力は見ただろ?今度は俺の力を見てほしいものだな!!』



この世の天下を取るほどの犬の神――



別名――『大神』とはこの神官を指す
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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