其の百六十三 メリークリスマス!

文字数 1,499文字

「寒い……、――寒い……。
助けて……、助けてよ……。

お父さんもお母さんもお姉ちゃんもいなくなったの。
スイくんもアヤカも先輩も離れちゃったの。

私の…、私のことを裏切ったの。


…………………………、曖昧なものは私を傷つけるくせに

このままじゃ怖いんだ
いつまた死んじゃうんだって思うと怖いんだ

ザワザワするんだ
落ち着かないんだ

誰か私に声を聞かせてよ!
誰か私の手をとってよ!!
誰か私に構ってよ!!!」



声はなかった

ただただ黒と朱の瞳が大きくなっていくだけだった

早妃カズミは誰もいない空間をジッと見つめると、深夜の病棟を歩いた



-―――――――――――-―――――――――――

どこかでカップルが交尾をはじめたころ

47区では鉄球が花火を散らしていた

川や山を関係せずに、数十、数百発の弾丸ミサイルが高層ビルや民家を飲み込んでいく



第8から第17までのレーダーサイト沈黙!

特科大隊 北防衛線より侵攻してきます!

南防衛線からも2個大隊が接近中!

(やっぱり最後は殺し合いだったな)
「総員 第一種戦闘配置」

三島の指示に、警官たちは曇った顔を浮かべる

「今日の夜は、子供たちとクリスマスケーキ食べる約束なのに…。」
「敵はそう思っちゃくれないさ。」



建物がジェンガのように雪崩を起こし、大地は地響きを立てていた


「………。」

1人の警官が、本部につながる別館を、落ち着きなく警備していた
辺りは閑散しシャッターはすべて閉じられ、ネズミ一匹は入れない閉鎖空間になっている

「………。  うッ――!?」

真っ黒な手が口を覆うと、悲鳴も出せずに、背中にナイフが突き刺さった

淡いピンクの血が地面に4、5滴落ちる――

抵抗できないように警官が持ち上げられると、後ろのシャッターが全て順番に開き、黒く武装した兵隊が、朱く瞳を光らせてアリのように隊列を組んで姿を表した。


ブザーが鳴る

「どうした!?」
「別館の方から異常が――」

周囲の警官が困惑しているとき、近くにあった大型トラックに弾丸が撃ち込まれた。
火花はガソリンに引火し、一気に点火

警官たちは消し炭になって消えた


警告音が認知されたときには、シャッターから放たれた【アリ】の大軍が、死体を踏みつけながらライフルを持って侵攻を始めた。



警官の死体から溢れた血が、地面にある警察シンボルを上書きしていった




山ヶ岳トンネル 使用不能!

東 2番搬入路にて 火災発生!

侵入部隊は第一層に突入しました!

次々と制圧される景色を見るも、三島はてきぱきと指示を放つ

「東の火災は誘導よ! ヤツらが47区の制圧目的なら、本部を狙ってくるわ!
至急 代行者たちに連絡を取ってちょうだい。
鹿島刑事は?」

「現在 40区にいる模様です。」

「鹿島刑事には比較的近い 別館を頼むように伝言して!」
了解! もしもし鹿島刑事――

少し離れた位置にいる桜も、部下たちに指示を出しているのか慌ただしい姿をしている


「……刑務所の状況は?」

「連絡が繋がりません! 電波の影響かと……!」

「囚人が脱獄すると余計混乱するわよ。 補足急いで……!」


南防衛線 8番ルートまで起爆準備完了!
半システム後に固定されます

「次に北電発事務所に回路を――」  

そのとき警官が恐怖した顔で三島に訴える

「ダメです……電発事務所壊滅……!!」

そのとき目の前に広がっている大型モニターに、1人の女性が映る

「なんてこと………ッ」


-―――――――――――-―――――――――――


「まぁ、いいんじゃない? 着々と殺せていって。」

「そりゃ儂の作戦じぇすから。 失敗などありますまい。」

燃え広がり、空を焦がそうと背を伸ばす炎に、影を落としながら二人を姿を現した。

47区 北防衛線 宮城キョウコ 到着である 
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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