其の百六十二 決戦 第47区治安維持地

文字数 1,625文字

「吉田ミョウが死んだいま、【新世紀】を創り出すことは敵わない。
だからせめて私の手で葬ってあげることが報いなのよ。
昔の自分へのね。」

月が照らす深夜の闇に、女とタコが口を開いている

「それはまた儂らの計画とは違いますなぁ。
【儂らの存在】はその新世紀を作るためにあったのではないのですかい?
死は何も生みませんわい。」

「だからこそ――死は彼らにプレゼントするのよ。
人の形を失ってまで、私たちは後世の子孫のための、新世紀を作る必要はない。
今から行うことが私たちの、唯一の【救い】なの。」


朱い瞳が輝き揺れる 滴る血の様に


「【死】ですかぁ。 
確かに我ら人類が取れる、もっとも安全で確実で、絶対的な平和性を持っておりますからなぁ。」



日が暮れていく
死と血と平和を持って、世話しない人々へのプレゼントとして

-―――――――――――

12月24日 26:00 
47区警察本部 に警告音が鳴らされる。

「左側を非常通信回路に切り替えなさい!!
ええ……!! そうよ衛星通信をつかっても構わないわ。
右側の状況は?」

「CPUウイルスが少なくとも5――いえ、8種類侵入しています…!
47区のメインコンピューターに向かっている模様!」


けたたましく鳴らされる警報を縫いながら、三島は部下の警官に指示を下していく
しかし、状況は好ましくないらしく、彼女の頬には季節外れの汗が流れていた。

「まずいわねぇ。 
メインコンピューターへのハッキングは、47区の占拠の同義よ。
侵入種は冷夏事件と同種?」

「いえ…、ベースは同じですが、そこにアメリカ、中国、イギリス、ドイツと世界各国の技術が取り入れられています。保守データが対応できていません!」


機器障壁第4層を突破されました!


三島はため息をつく



主データベース閉鎖……駄目です! 侵攻をカットできません
予備回路への侵入も確認!阻止できません!!


「クリスマスの日に襲撃とはやってくれるじゃない……っ。」



-―――――――――――


『こんばんわ 鹿島刑事、聞こえすか?』

「あぁ回線はちと悪いが…、いまそっちに向かっている。
桜 いまの状況は?」

車に設置されている無線越しに慌てた音が漏れ出している。

『現在 CPUウイルスがハッキングを掛けています。
冷夏事件でのウイルスワクチンのおかげで、多少ですが足止めできており、直接的な被害は確認していません。

ウイルスは三島刑事も対応を続けておりなんとかなりそうです。

ただ…鹿島刑事には―――」


「構わん、俺とユキが考えていることは同じだ。
いまは敵のことだけ集中しろ。」


-―――――――――――-―――――――――――


フリーズ フリーズ フリーズ フリーズ フリーズ フリーズ フリーズ フリーズ

電子音声が一定間隔に同じ単語を繰り返している
モニター画面には水色になり、プロテクトと表されていた。

「全く…機械系を勉強していて正解だった……」

「三島刑事…!」

「大丈夫……。ウイルスはもう進行できないわ。
だけど、【朱】の奴らがこの程度なわけない。こんなのは前哨戦にすぎないわ。」


桜は気休め程度だが、温かい紅茶を三島に差し出す


「【朱】の目的は、五島〈五十ノ島〉の中枢である俺たちの皆殺し。
それに加えて、救済の代行者2名……、焦るわけです。」

三島は紅茶を受け取って上着を羽織り、一口飲む

「外部の警戒を高めるわよ。 気を抜かないでね……!」


-―――――――――――-―――――――――――


「47区はメインコンピューターに対して、第666プロテクトを展開しました。
この障壁の突破を容易ではありましぇん。」

宮城はため息をつく

「そう――致し方ないわね。
できるだけ静かに、素早く済ませたかったけれど。
47区への直接侵略を行います。」



闇夜に軍事用ヘリコプターが身を浮かせる

朱い目をした侵略自衛隊は、乱れ1つなくライフルを構える。

47区の町を覆った戦車はたちは、同タイミングで大砲を放った――

12月25日 全ての人に向ける愛と慈悲の クリスマスの始まりである
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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