其の百七十六 自律 依存からの収束点

文字数 1,649文字

【人は 人としての力で解決していかなければならない。】

そのように女王は言った

他から見ればまっとうな意見なのかもしれない

しかし、実際に行うのは難しいものである



「っ~~………!」
腕から生えた氷が内側から突き破り、彼の腕を覆っていた

「バカじゃないの。
ルシフェルとの戦いを見ていて、生身の人間が私に敵うわけないでしょ。
とっとと家に帰ってガタガタ震えてなさいよ。」

男が腕を引きずりながら近づく

「やめなさい。」

男が腕に成っているツララを引き抜きながら近づく

「もうやめて。」

男がツララを投げ捨てて近づく

「いい加減にして……ッ。」

足取りだけで重症だということは明白だった
それでも男は倒れない

意識を朦朧とさせながら

ぺチン

宮城キョウコに拳を当てた


「いつまでそんなことを続けるの……。」

「………」

彼女は上崎レイジを顎を殴る飛ばした
空中に血と唾を散らして彼は飛んでいく

「なによ…そんなに死にたいの…?
あなたがそんなにバカだったなんて知らなかったわ…ッ――」


鼻血と吐血で顔が血まみれでも、男は起き上がっていた

腕を覆っていたツララをひと思いに、皮膚、筋肉繊維ごと引きちぎる
普通ならあまりの痛みに悶絶するか気絶するレベルのはずだが、それが余計に宮城の感情を揺さぶっていく

瞳は黒 普通の人間 普通の男性 普通の8smt9skrs――?

また、またしても上崎レイジは彼女の体に触っていた

肉体は もう女とは呼べない

硬く 冷たく 怒りを飲み込んだよう巨躯――


「なぜ――?」

疑問

「どうして……、わたしにこだわるのよ……。」

疑問

「女なんて、女なんて星の数ほどたくさんいるじゃない……!?
どうして、こんな私なんかにこだわるのよ……。
こんな、化け物に成り果てて、虐殺者になったわたしなんかにより……
もっといい女はいるじゃない……!」

心の壁がヒビが入り言葉が少し漏れ出た

「はは…。」

上崎が笑う

「ごめんね。
やっぱり嫁に欲しいと思った女性は、君しかいなかった。」

「―――」

「こんな世界で生きていても
君がいなかったら、それ以上なことも、それ以下のこともなかった…。
君といっしょに死にたかった。
だから、……男として君を殺したかった。
まぁ【君の方が強くなってた】けどね……。」


諦めたように優しく弱々しい声音に、宮城キョウコは立ち尽くした


(『君と一緒に死にたかった』か。
わたしたちって、同じこと考えてたのね――)


後ろ髪を引っ張る様に過去の情景が思い浮かぶが、宮城キョウコの行動は変わらない


【問題はあなた自身にある。
もし、過去に区切りを入れられずに引っ掛かりを持った状態が続けば――
君は死ぬ。それも最も自分の望まない死に方になる。】

全てのきっかけとなった青年の言葉
それを指す意味を、彼女自身 理解していたからである

中途半端で全てが台無しになることは

それ故に、うなだれている男の首筋に、氷の鎌を構える

「さようなら。 わたしの大好きだった人。」

深呼吸をして思い切り振りかぶったとき

「………?」

満月の月明かりのみのため、薄暗いが、何かが近づく音が耳に届く
走っている音でも
息を潜めている音でもない

むしろその逆

隠れる気も、その計画性もない、乱雑な【大型バイクの排気音】。

予想だにしなかった状況に宮城は動きを止めてしまい、
そして反応を遅らせてしまった

土埃を突っ切ってきた、【ライダーを乗せていない真っ黒な大型バイク】が、真正面から突っ込んでいき、固まった宮城キョウコごと、海岸にそびえ立つ岩壁にぶつかり大爆発という流れになった。

「……!?」
突然の事態に上崎レイジは唖然として口を開けるしかできなかった

岩壁で次々とガス爆発を起こし続け、辺りがロウソクのよう揺らめく明かりに包まれるなか
目の前に二人の青年が並び立った

「君たちは……。」

見慣れた
1人は頭に包帯を
1人は頬に湿布を張り付け、ザ・ヤンキーといった感じである

「上崎の先公、悪いが まだ死ねないぜ。」

「ええ。 だって――」

爆炎とともに、氷の武装女が姿を現す

〈 まだ なにも終わってないもの 〉

久木山レン(ハチミツ) 大窄カイ 参戦である
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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