其の百七十七 宮城キョウコ VS 25校メンズ

文字数 1,694文字

「……っ―――!?
………。
鹿島、刑事……。」

別館の10階に突き刺さった車が、軋み音をたてて周りを崩してしていく
青紫にただれた皮膚に意識を奪われながらも、桜は目の前に立つ刑事に目をやる

「今日はユキちゃんとの――、クソ……申し訳、ありませ……ん。
俺は――自分は、またしても、なにもできませんでした……。
三島刑事までも……――っ。
平和を守るプロなのに、俺は、なにも……、なんにも……!!
もうしわけありません…
本当に、もうしわけありません……っ。」

涙ながらに悔し涙を流す桜に、鹿島は目を合わせた

「片腕を黒豹に喰われ、猛毒を受けた状態でこの町を守ろうとしてくれたんだろ?
勇敢な戦士を責める理由がどこにある?」

「……――。」

桜の使っていた折れた刀をひょいと持ち上げて、刀身を一瞥する
真っ二つに折れて、側面もがったがたに刃こぼれし、赤や紫などのどす黒い血が付着しており、戦闘の激しさがうかがえた

「イ~~ひっひひひいいひひ!!! また一匹ムシケラが死ににきた~~んんん
まったくどうして人間はどうしてこうも頑固なんでしょね??
勝てぬとしりながら無駄な抵抗をやめぬとは……
ま、これほど実験動物にふさわしい種族はありましぇんがね~~!!」

タコ坊主は10本の毒足をくねらせながらよだれをまき散らした



-―――――――――――-―――――――――――



「まだ、なんにも終わってないもの。」

大爆発を起こしてキャンプファイヤーを見ながらハチミツとカイはそびえ立つ
高校3年生とは思えない程、この状況でも二人は息もなにも乱していなかった

「な、なぜ、君たちがこんなところに……っ!?
ここは危険だ!
すぐ離れなさい……!!」

自分のことを気にせずに上崎が声を上げる

しかし、それにため息をついてやれやれといった感じに、ハチミツはスマホを見せつけた

「上崎先生、危ないことは分かってるんだけど
私たちにも引けないことになっちゃたのよ。」

スマホの画面には着信履歴が映っている
そしてそこには 【雨宿スイから着信が入っていた】

「スイを殺したのはあの朱目のヤツ等なんだろ?
こうみえてもスイとは昔なじみなんでね
アイツの敵となったら、俺らの敵だろが。
敵なら殺すしかねぇだろ。」

カイが首の骨を鳴らす

爆炎から氷の武装女が姿を現した
新しく登場した人間たちを興味深そうに観察していく

「その制服にその顔、見たことあるわ。
【久木山レン】に【大窄カイ】か。
クク、どうしたのまた?
あなたたち二人ってそんなに仲良かったの?
いまさらこんなところにきて、何ができるというのよ?」

ガシャンガシャンと音を出して女が近づいてくる

「仲が良い?
冗談は顔だけにしてよ。こんな学もない脳筋ゴリラと誰が仲良くするとでも。」

「この島で我が物で好き放題しているお前たちにイラついてるだけだ。
それ以外なにも考えちゃいねぇよ。」

その返しになにかを感じたのか、宮城キョウコは笑っていた
今回のはなつかしさを思い出すように

「たった三匹のアリが、恐竜に勝てるわけないってのに。
あーー、そうね、男って、バカだもんね。」

彼女は奥でうつ伏せになっている上崎と目を合わせると、武装を解除した

「いいわよ
生徒に指導するのが、教師の役目ですもんね。」

腰まで届く黒い髪
薄ピンクのフリルのついた襟シャツ
タイトスカート
黒タイツ
パンプス―――24区高等学校 1年2組の担任の姿が見え始める

「わッ――!?

「ちッ――!?」


ハチミツとカイの背中部に、同時に衝撃が走って吹っ飛ばされる
視界が揺らぐ威力を、手と足と地面を使って軽減し、2人はなんとか態勢を整えた


(見えなかった……、なにか動いたような気はしたけど……。)

(あの女、24区の黒豹よりも速かったぞ…。)


「そこで寝っ転がって見ときなさい。
自分の生徒が、殺されるところをね。」

彼女は背後でうつ伏せになったままの上崎に、目を合わせることなく言い放つ

「この感覚、久しぶりだな。 
どうだレン? ウズウズしてくるだろう?」

「あんたと比べないで…
恐ろしくて、体がガタガタ震えてるわよ……!」

月光と陽炎だけが照らす闇夜のなか、また新たな戦いが始まる

「男は害虫なのよ!
死んでしまいなさいッッ!!!」
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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