其の百六十九 私たちの願いは熱き閃光に変わった

文字数 1,543文字

男が歩みよる

静かに 静かに 内なる静かな怒りをこめながら

「……」

宮城キョウコは黙りこんだ 男の強大な気を、その本能が無意識に察知したのである

「遅くなってすまなかった 三島刑事。」

「ルシ……ッ、フェル…さん……。」



ルシフェルが三島へと近づいたとき 朱瞳に女は氷刀を持って彼の背後に襲い掛かっていた


「【蒼】は一匹たりとも生かしておかないわ。」


そして男の首元を狙い定めていた

「……!」

氷を振り下ろしたとき、そこには首元ではなく、逆に男の足が襲い掛かってきていた

「う……ッ!!」


宮城の顔に蹴りが炸裂し、パラパラと砕けた刀が落下してくる


「私にカウンターを当てるなんて、なかなかやるじゃない…」

彼女はため息をついた

「あっはっは……!! み、宮城キョウコ……
本気でやったほうがいいわよ……っ!!」

三島は笑いながら、宮城を煽った

「あ、あんたたち【()】は、【()】に負ける運命なんだから……っ!!」

「……!」


抉れた内臓を抑えながら、上半身だけを起こして三島は笑い続ける

「あ、あんたの過去になにがあろうと、関係ない……
【悪人】になったときから、あなたは、もう終わっていたのよ……
はあっ…はっはっは………ぁ――っ!?」


氷の矢が三島の心臓を貫いた


「言ってなかったけど、私――くどい人は大嫌いなの。」


刑事は地面に横たわり、血の水たまりを吐き出していた


「おい。 三島はもう身動きすらとれなかったんだ。
わざわざトドメをさす必要はなかったはずだ……!」

ルシフェルの言葉に、宮城は腕を組んで涼しそうに眼を閉じる

「い、いいのよ……、ど、どうせ…わたしは……死ぬんだから……」

心臓をさされたというのに、三島は気迫だけにすがってルシフェルに声を掛け始めた

「あ、あなたなら、わ…わたしたちの……望む世界を取り戻せるはずよ……っ
よ…よく聞いて…私たちがいるこの五島という島は……自然が豊かで、本当に、平和なところだった……。」


ゴホゴホと刑事は血でむせながら続ける


「あいつが…、あいつがやったんだ……。
鹿島刑事や桜くんが、私たち警察が……、必死に掴んだ、平和を……!!
とんでもない回り道をして、血反吐はいて、命を賭けて、戦い続けたというに……」


ヒビの入った彼女の爪が、アスファルトに食い込んでいく


「なんの罪もない……人たちが、何も知らずに、殺された……」

目を伝い、頬を伝い、耳を伝って、温かい水滴がポタポタと落ちていく

「お…お願い…宮城キョウコを……宮城キョウコを…たおしてぇ……」

黒づんでいく視界のなかで、希望に手をのばすように刑事はフラフラと腕をのばす

「救済の……どうか……わたしたちを……たすけ…て……―――」

ぱたりと糸が切れて、三島刑事がしゃべることは無くなった





聞こえるのは風の音のみとなる



「フ…やっとくたばったのね。」
宮城キョウコは微笑んでいた


「三島刑事 あんたが泣きながら頼むなんて…
よっぽど悔しかったんだろうな……」


彼女の遺体には、先程まで生きていた証としての涙が刻まれていた


「代行者になったとき、俺は極力 現代人とは関わらないようにするつもりだった。
生まれも時代も違うんじゃ、余計なすれ違いと生むと思っていたからだ。

だがな……、あんたはただの人間でありながら、人としての誇りを最後まで捨てなかった。

俺にもすこし分けてもらうぞ、その誇りを……」


――等しき死と祈りを以て 彼岸の女に祝福を
ルシフェルの詠唱によって、気休め程度であるが彼女の顔が和らいだ


「俺は蒼き救済の代行者だ。
貴様に殺された人たち 苦しめられた人たちの代わりに……
貴様をぶったおす―――!!!」


「くだらないことを。」



朱と蒼の瞳がその場を支配する

辺りはタコ坊主の命令により、軍隊は蜘蛛の子を散らして すでに閑散としており

代行者としての2人だけが残された―――
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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