其の百六十五 三尾アヤカと諫早ナナ

文字数 2,123文字

「しかしなぜ別館を落とそうとするんですかい?
本部を落としてしまえばそれでいいのでは?」

宮城の命令にタコは言及する

「べつにしたくてやってるわけじゃないわよ。
ただ、はぁ……吉田ミョウっていう馬鹿が警察に渡してしまったものがあるのよ。

これに勝とうが負けようが、私はもう戦うことをやめるけど、
この先――いってしまえば1月からの計画は引き継がないといけないの。

そのために【リンフォンっていう真っ黒な本】を回収しないといけのよ。
あの別館からね。」


「それも吉田の命令で? また生きて帰ってくるんじゃないんですかい?」


「やめてよ。 あんな溝カス最低変態ナルシストクソ野郎が帰ってきたら、間違いなく世界が終わっちゃうわ。」


-―――――――――――-―――――――――――

第2層は完全に制圧

別館と黒本は未だ確保できず

本部下層エリアにて交戦中

フィフスマルボルジエは直ちに滅滅却処置に入れ

壁に血が張り付いた 虫の息である警官の顔に銃弾を3発撃ち込まれる――

重要刑事は発見しだい射殺 非戦闘員への無条件発砲も許可する

45区隊・46区隊 速やかに47区へ突入せよ


「民間人の女を発見――これより射殺する。」


47区に限りなく近いところで、諫早ナナは武装した兵士に囲まれていた。
3人の大人に囲まれて、言葉も発せない過呼吸になっている。

1人の兵士が拳銃をナナの頭に押さえつける。

その拍子にナナから嗚咽がこぼれる。


「悪く思うな、嬢ちゃん。―――ッ!?」

兵士の頭にライフルの弾が突きぬけた

一発 さらに一発 もう一発 走りながら銃の反動を抑制して人影が近づいてくる

突然の不意打ちに二人目は腹を撃ち抜かれ、

三人めは、蹴り飛ばされて地面に倒れる


倒れた兵士にその人は顔面に銃口を突き付けると


「悪く思わないでね。」


目 鼻 唇ごと 命を吹き飛ばした


新手の敵かとナナは警戒したが、よくみると兵士ではなかった。

大人でもなく 男でもない

25校の制服スカートを風に揺らす、自分とほとんど変わらない体格の女の子だった


「私は三尾アヤカ。 あなた24校の諫早ナナでしょ?」



第7隊の杉山隊の支援はどうか―――

47区の西 南 東の戦線は制圧し、45区~47区まで包囲網を張りました。
起爆破棄処理の点火も問題ありません。

宮城キョウコ氏も北戦線に現着の模様 目下 制圧ルートを調査中

「おうちが消し飛んじゃった………、お母さんはお父さんは?」


「―――………。
アイツら、47区のほとんど制圧しちゃってる。
余裕は無いわね。」

アヤカは殺した兵士から奪った無線をいじりながら、ため息をつく

「急ぐよ。諫早さん。」

そういって 腰を抜かしてガタガタとしているナナに肩を貸して歩き始めた。




「構わん! 本部よりも別館への通路を分断させろ!」

本部 主モニター室では苛烈な銃撃戦が繰り広げられていた。

警官 職員は椅子と机に身を隠し 
武装兵士は盾をつかっての激戦になっているため、互いにジリ貧の戦況にあった


「あちこち爆破したくせに――ここには仕掛けてこないか…!」

「一気に肩を付けたいんだろうが、下には超強自爆地雷原が埋まっている。
さすがに、巻き込まれたくなんだろ……!!」

「だけど、敵の親玉は氷を使った化け物って聞いたぞ。
仕掛けられたらヤバいよぉ……!」

「弾道ミサイルもな…ッ。」


直後 本部 B棟に零に近い氷塊が、C棟にミサイルが5、6発放たれ、計16階分のガレキの雨が散乱する


「ああクソ!! いわんこっちゃない!!」

「【朱】は加減ってものを知らんのか!!」


さらに、ダメ押しに地上への無差別の爆撃により、モニター室は警告の赤一色に染まり地震のごとく揺れを伴っていた。


「ねぇ! どうしてそんなに殺し合いがしたいの!!??」





「もともとは【新世紀】を創るつもりだったみたいなの。」

「………」

ナナに合わせて歩いているため、アヤカはフラフラになりがらも肩を貸し続けていた
顔には煤がついており、体の隅にガラスの破片が刺さっていたのを見るに、察しがついてしまうレベルである

「………」

「――今から言うことの意味は分かってないから独り言と思って。
そういう風に聞いたことがあったの、【神ではなく生命体】を使ってね。」


ナナはアヤカの唇だけに注目してるだけである。


「地学基礎によれば地球という惑星ができたのは46憶年前らしいわ。

それが私たち人類の、あるいは全生命体の母に繋がるらしいのだけど、そう単純なことじゃない。

惑星にとって、生きる生命こそが、すべての始まりの元凶だったのよ

諫早さん――私たち人類もまた、生まれたときから、惑星によって滅ぼされる目的(ターゲット)だったの。

そしてこの状況は、地球史における【6番目の使者】がもたらしたもの。

これまでも過去5回の使者が遣わされて、そのたびに生命は絶滅の危機に瀕したの。
すべては地球が望んだことらしいけどね。

わたし達人間は――地球と共存していこうとしているけど、地球にとって私たちは体に潜むうじ虫か、ただのガン細胞でしかない、分かり合えない運命なの。

いや…人間同士も分かり合えないか。

いい? 諫早さんあなたはここから生き延びて。

あなたはまだ死ぬべきではないわ。」


2人の少女はボロボロながらも、満月の照らす砂利道をえっちらおっちら歩んだ
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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