決闘①
文字数 1,360文字
目の前には、真奈美が仁王立ちをして歌音を待ち構えている。
それでも、歌音は犬の間を走り抜けようとする。
しかし、がぶりと犬に太股を噛まれてしまう。すごく痛い……。さすがは、猛獣使い……。
彼女が生み出した犬は、従順で私を襲うように指示を出すと、歌音に次々と襲いかかってきた。
その時、下から叫び声や呻き声が聞こえてきた。
もしかして、圭も相当苦戦しているのか? 確か、冬馬を誘き出す、と言っていたはずだ……。歌音は、下を見ようとするも、犬たちに邪魔をされてそれどころではない。
時々、電撃が宙を駆け巡るのが見えたり、水の塊が弾けたりしたのが、歌音に飛んできた。ちょっと……過激すぎない? 本気でやりあっているのは分かるけど……。
しかし、歌音の身体はただ単に重力によって落下するしかない……。
しかし、ギリギリ間に合わない。
歌音の手を掴もうと真奈美は手を伸ばしたが、空を切った……。あっ……歌音は、死ぬんだ……。そのあと、激しい痛みを感じてそのまま死ぬんだ……。怖い……。歌音は、目を瞑る。色々な考えに支配される……。こんなダメな指揮者でごめんなさい、とか……。最期に言いたいのは、圭……ごめんね……。歌音は、そのまま意識を手放したのであった。