夢灯籠
文字数 1,310文字
十年前、双葉とミミは一緒の時間を過ごしていた。
一緒にピアノを弾いて、スイカやかき氷を食べ、一緒に昼寝をするような仲のよい親友であり、ライバルであった。
双葉とミミは、一緒に作った灯籠を川に流して願いを叶えようとしたのだ。もちろん、双葉とミミが仲良く過ごせますように、という子供じみたお願い事……。双葉とミミは、それを夢灯籠……と呼んで喜んでいた。
しかしそれは、死者の魂が無事天に召されるようにする道標であることを当時知らない。
子供の好奇心ってやつは怖い……。
しかし、結果がでない双葉と結果が出るミミ……遂に双葉は、限界に達してしまったのだ……。
そして、双葉はピアノから逃げた。
逃げてユーフォニアムを始めたのだ。
当時は、ユーフォニアムがとても重くて辛かったが、それなりに筋肉もついて、心も強くなった気がした。
しかし、それを知ったミミは大激怒したのだ。
全てはワタシのせいだ、と双葉は今でも思っている。だから、「君の名は。」コレクションでソロが回ってきたときは嬉しかった。
しかし、無伴奏ソロ……。
ワタシには無理だよ……、と双葉は思っている。
またピアノと同じように諦めちゃうのかな……。誰も助けてくれないこの世界で双葉は、もがき苦しみながら生きて死んでいくのだろう。
相手は、双葉の事なんてどうでも良い、って思っているだろうけど……。
双葉は、夢を灯籠にのせて掲げたい……。ミミと仲直りしたい、って。
双葉の見ていた夢はここで途切れたのであった。