トリカブト
文字数 1,836文字
本当は、里紗に憧れてフルートを始めたのに、今だと大河の復讐の対象に変わってしまった。理由までは、分からない。
里紗が、普通ならミスらないところでミスを犯した事に怒っているのか?
それとも里紗を裏切ったファンに対して怒っているのか? それさえ理解できない大河自身に怒っているのか? それさえ分かれば、大河も里紗もここまで傷つけあう必要もないのに……。
しかし、里紗はクラリネットを吹けなくなっていた。自分勝手に、自分の殻に閉じ籠った結果が生み出した今回の事件。大河は、閉じ籠った里紗を許せないでいた。昴も里紗に優しすぎるのが、キズだ。
大河は、ベッドに寝転がり天井を仰いだ。
しかし、空虚なこの部屋には、イビキのみが響いている。
復讐はしたい……でも、殺したくはない。
なのに、最近大河の口からは、殺してやる、という言葉が増えている事に本人は気がついていた。
しかし、それがどうしてというところまでは分からなかった。
噴水の水が流れる音・木の葉が擦れる音……ここには、自然の音が満ち溢れている。
それでも、精神統一をすると出てくるのは、大河が里紗を殺しているシーンばかりだった。
月明かりが真っ赤に染まっており、怪しく輝いているのも分かる。
しかし、大河の目の方が赤く怪しく光っていた。
悠は呟く。大河に聞こえないように……小声で……。