一生来なくて良いのに……②
文字数 1,132文字
里紗と一緒に俺は、寮の自室に向かう。薬や氷枕などたくさん抱えて。絶対に悠くんは、俺には弱音を吐かないし、弱さを出さない。周りを心配させない気持ちは分かる。長男や長女って、そういう性だと……。俺だってそうだ。兵庫県に残してきた妹の為なら何でも出来る訳……。それは、誰だって同じだろう?
自室の扉を開けると部屋は真っ暗だった。悠くんが使用している二段ベッドの下のベッドライトだけ照らされている。
俺の考えは、浅はかだった。俺の後ろにいた里紗が、俺を押し退けて部屋に入った。
里紗の声かけは、優しい。優しく周りを包み込むような声。俺は、里紗の声が好き。里紗のクラリネットの音も好き。だからこそ、俺は里紗を壊した里紗の弟を許せない。
隣からは、結愛ちゃんや勝己くんの声が聞こえてきていたが、俺は里紗を追いかける事は出来なかった。