合同演奏会当日②
文字数 2,206文字
「sing sing sing」から始まったリハーサル。里紗ちゃんのクラリネットソロや圭くんのトランペットソロのマイクの位置を確認する。マイクの位置の確認が終わる。顔色が良くないクラスメイトたちの顔を見る。いったい、どうしちゃったんだろう。
しかし、反応が鈍い。
どうしちゃったんだろう。悠くんは、ずっと俯いたままだし、圭くんも大きなため息をついているし……。
出だしから恵都くんの叩くドラムセットの音は重苦しかった。あれ? 私たちってこんなにも下手くそだったっけ? 続いて入ってくる金管パートの音色も重たい。何か音色が暗い。どうしてなんだろう……。
私は、思わず指揮を止めてしまった。
悠くんの事だからすぐに復活することだろう。お兄ちゃんも男子控え室にいてくれている訳だし。でも、悠くんが本番までに体調が回復しなかったらどうしたら良いのだろうか。
多分、クラスのみんなは、その事で心配でリハーサルどころではなかったのだと思う。だから、私が何とかしなくちゃ……。
後、二時間でお昼の部が始まる。お昼の部は、新勢力の東北大付属仙台高等学校と竹下高等学校の演奏から始まる。夜の部は、全国常連の聖セリーヌ学園高等学校と私たちミラージュ音楽学園高等学校。
こんな状態で本番を迎えてしまうなんて……。同じ学校のメンバーで端に集まって食べているけど……お弁当の味なんて分からない。卵焼きの味って……こんな味だったっけ? 同じ学校のメンバーの女の子といっても誰も話さない。黙って黙々とお弁当を食べているだけ。
こんな感じで本番を迎えちゃっても良いのかな?
その時、背後に影がさす。違和感を覚えた私は、お弁当を床に起き、後ろを見た。
鋭い視線で私の事を見下ろしている聖セリーヌ学園高等学校吹奏楽部の部長である宇佐見さんがいた。
しかし、明里ちゃんは怒りを顕にさせ、宇佐見部長に飛びかかろうとした。
明里ちゃんは、里紗ちゃんに説得され、悔しさからか俯いてしまった。
私は、こんなにも纏まりのないメンバーの乱れた心を初めて見た。不安に押し潰されそうな各自の心。今までの練習の成果を出せるのか不安になってきた。