英雄の焦燥感
文字数 2,781文字
滝噴水のある広場にあるベンチに腰をおろし、歌音は大きなため息をつく。
この音色に心当たりがあった。
まるで、トランペットの音色が本人の気持ちとしてこちらに伝えてきているようだ。
変幻自在に操られる音色。その中には、魔法もこめられていた。愛の調べ……とでも言おうか……。キラキラと輝くシャボン玉が音にのって辺りに飛んでいるのが分かる。しかし、そのシャボン玉は音の変わり目とかに全て弾けて消えてしまった。まるで迷いと焦燥の音色だ。
歌音は、圭を探してトランペットの音色を頼りに圭を勾当台公園で探し始めるのであった。
しかし、人と接触してしまい、その場で転んでしまう。
その時だった。
圭は、二人に睨み付けるような視線を向けているのが分かる。その中には、焦燥感を感じることができた。
歌音は、足首の痛みにその場に座り込んでしまった。
『圭の音楽が死んだ』とは、どういう意味なんだろうか? 言われた本人もあまり気にしていないようだし、良いのかな? でも、ここで聞いておかないと後悔するのは、歌音でもあり圭でもある。
歌音は、重たい口を開いた。
本当に恥ずかしいことを言う……この人。『イケメンは、何をしても許される』というルールは、定着してきつつあるのは事実だ。
歌音は、圭を宥めようと言葉を選ぶことに必死になる。選んだ言葉を紡ぎ出す事は、恋愛になるとどうも難しい。
そして、歌音は言葉を紡いだ。