香菜の思い
文字数 1,280文字
香奈のラズベリーのような色の目は、昨日の夕方から真っ赤に染まり、世界まで真っ赤に見えてしまっていた。明らかにおかしくて苦しくて……。あの日の約束さえも忘れてしまいそうで……。
多分、香奈はこの先の未来に怯えてしまっているのだろう……。変な緊張からか手汗がすごく、ティンパニのバチも何度も落としていた。普段ならこんなに手汗をかかないはずなのに……。苦しい……。
あの日の約束に香奈は苦しめられている……。
でも、普通ってどのラインが普通なのか……香奈の中で分からなくなっていた。
だから、特別仲のよくない歌音に打ち明けてもいい内容だけを話しているのだ。色々な音が混じりあい、複雑な音楽を作り出している。今の香奈のモヤモヤと同じように色々な音がバラバラと聞こえてくる……。さっきの歌音の解答にイラッとしてしまった。普段、あまり感情を乱されない香奈は何故?
世界は、赤くない。香奈は、……もしかして……。
勿論、普段褒めてくれない美園にも褒めてもらえた。何か羽が生えたかのように腕が軽い。
歌音、ありがとう。
香菜は……もう少し二人に向き合ってみる事にした。
そう思えるようになったのだから……これは、香奈の進歩なのだから……。