事件の前触れ
文字数 1,961文字
外は、もう暗い。合奏が終わってからどれぐらいの時間が流れたのだろうか。
近づこうとしたが、荊で道を封じられ、愛花自身の本当の音楽を作ることが出来なかった。「祝典序曲」をやることも遅い時期に決まったし、本番まで後一ヶ月だ。
この現状に歌音は、ため息をついた。
だから、歌音にとっては一成と亜里沙の関係が羨ましく感じる時もある。
一成と亜里沙は同棲しているが、疚しい話は一切聞いたことがないし、微笑ましいぐらいだった。
しかし、その考えは甘すぎたのだ。
ここは、学校内。誰が見ているかなんて分からない。それが例えクラスの人であれど、世界さえも大きく変えてしまう可能性さえ秘めている。
愛花は、たまたま窓から外を見た。中庭で誰かが話しているのが見え、少し愛花の表情に陰りが見えた。
愛花は、詩織に悠の事を自慢げに話してくる。こうなると逃げ出すことは出来ない。
詩織が、愛花を引き連れて寮に戻る頃には、日付が変わっており、最終的には警備員に見つかり、注意を受ける事になった。
とんだとばっちりを受けた詩織は、そのまま部屋に戻るとベッドに倒れるように寝そべるとそのまま夢の世界に誘われたのであった。