対立
文字数 2,066文字
しかし、歌音と圭がキスをした日から圭と悠がすれ違うようになった。
二人が話しかけるような事はなく、平和な日々が流れていたのだ。
一一月一〇日の歌音の誕生日から一週間の日々が流れたその日、圭と悠の対立が起きてしまった。起こしてはならない事なのに起きてしまった。
その日の合奏の時間であったが、「祝典序曲」のメロディーラインを演奏しているクラリネットとトランペットが喧嘩をしているように聞こえた。
クラリネットパートは、里紗が誰かに喧嘩を売るようには見えないし、渚など数人は穏健派だ。
トランペットパートも圭以外話したことないから分からない。多分、穏健派だと思われる。
……となると、喧嘩しあっているような音楽になっているのは、圭と悠の対立しかない。その対立を見ていた歌音はため息をつきたくなった。
そして、例の事を口にする。
歌音と圭が犯人なのは分かっている。だって、圭が暴走したことが原因で悠を辱しめる事になったのだ。
一一月一〇日、寮に戻った後の話になるが、悠と圭がすれ違った時、悠が激しい視線で圭の事を睨み付けたのを歌音は見ていた。もちろん、昴も里紗も影から見ていたのだ。
この日が、兄弟喧嘩の始まりとなった日になった。歌音の誕生日から始まった喧嘩は、一週間経った今でも終息を見せる気配がない。
合奏中も続く悠と圭のにらみ合いは、歌音の体力をも消耗させていたのだ。
本番まで一ヶ月ちょっとなのに全く音楽は纏まっていなかった。輝きが弱い。このままだとライバルの竹下高等学校吹奏楽部にすらバカにされてしまうレベルであった。
バラバラと散らばり、各パート練習の部屋に移動を始めるクラスメイトたち。その中でも圭と悠のにらみ合いは凄かった。見ている歌音も気分が悪くなったぐらいだった。
これが、『あいつら』にバレなければいいのだが……。
歌音は、ハラハラしながら圭と悠を見守る事しかできなかった。
それを阻止する為に歌音は再び立ち上がるのであった。
しかし、この圭と悠の喧嘩を長引かせる要因は歌音にもあったと言うことはこの時、歌音自身は全く分かっていなかった。