囚われの蝶と籠の中の鳥③
文字数 1,620文字
しかしながら、アンサンブルをする里紗と昴は、大ピンチを迎えていた。
ビローン♪ デローン♪ デデーン♪ キィー♪ キキィー♪ (滅茶苦茶・不協和音)
未だにうまくいかないアンサンブルに二人は諦めかけていた。
そんな二人の元に歌音と一成が見にきたのは良いものの……それでも不協和音が続く。
一成は頭を抱えているのが分かる。
里紗は、呆れ返って歌音に言った。
里紗は、少しイラッとしたのが分かったが、すぐに大人しくなった。
歌音は、里紗の手首に一体何を書いた……昴も不思議そうに見ているが、昴には見えていないようだ。
昴も楽器立てに立てかけていたホルンを構えた。
そして、二人は譜面台の上に譜面を置き、スタンバイが完了する。
金に輝くホルンと黒く艶のある手入れのされたクラリネット……。
二人で奏でる最高のアンサンブルを復讐を企てる二人に聞かせる。
おまじないをかけられた囚われの蝶は、今だけは無敵なのかもしれない。ほんの少しの魔法の呪文と共にアンサンブルが始まった。
本番前日でようやく形になったのだ。
夜空の星みたいに煌めくクラリネットの音色と幻想的な風景をホルンがメロディーを奏であげていく。
里紗がまともにクラリネットを吹いているのは、これが初めて見る光景になったのだ。
これが、昴の求めていた音色なのかもしれない。
二人は、笑顔で「whole new world」を吹き上げたのであった。
明日は、里紗と昴のアンサンブルを復讐を企てる大河と郁に聞かせる。
二人の蟠りを溶かしてあげる熱くて淡いラブソングを大河と郁のために……