荒れた戦場……。彼にとっては、ここの事だったのだ、と歌音はようやく知ることが出来た。
誰もいない墓地の一角……。小さなお墓には、「 千葉家 」と彫られていた。彼の言うあいつの名前。千葉 香苗さん。彼女は、たった一〇年の月日を生き抜いた少女なのだ。
2017/05/26 22:31
彼女は、彼にとっては大切で大好きだった人だと聞いている。
2017/05/26 22:48
来たぞ……香苗。お前がいなくなってもう五年だ
2017/05/26 22:50
確かに五年だ。五年の年月が流れたのだ。六〇ヶ月の月日とでも言えよう。
歌音も彼女の存在を、ナリスを介して知ることになった。
歌音も彼女の存在を忘れていたのだ。記憶の改竄によって……。
2017/05/26 22:51
もうお前のいない世界で生きていても……何も良いことない。俺も今からお前の側に行くな
2017/05/26 22:56
ダメ!! そんな事言わないで!! 私は、そんな事望んでない!!
2017/05/26 22:58
歌音は、咄嗟に彼の腕にしがみつく。その反動で、彼が持っていた花が手元を離れ、地面に落ち、花弁が弾け散った。
彼の手元には、1つのカプセルがある。これが根源になり、彼は死ぬ。それが怖い。これ以上はごめんだ。
2017/05/26 22:59
やめろ!! これ以上は嫌なんだよ!! 生きていても何の特もない。あいつのいない世界は、空虚で仕方ないんだ!!
2017/05/26 23:02
歌音の手元から手提げ鞄も離れ、地面に落ち、ナリスが転がり出てきた。
2017/05/26 23:03
ダメだ……。これ以上は……力で勝てる気がしない。休日じゃない。もうこれは、修羅場だ。誰もいない墓地で修羅場とか……どんな昼ドラだよ!! 火曜サスペンスみたいな現状になっている。
2017/05/26 23:04
これ……どちらか死ぬパターン? マジお断り。歌音は、まだ青春してない。友情や恋愛を知らない。死ぬわけにはいかない。彼に死なれてもこっちは困る。
2017/05/26 23:06
ほんま痛いで、あんた!! 歌音!! もっと抵抗せんかい!!
2017/05/26 23:08
ナリスが喋り始めた。ちょっと待て!!人がいると喋らないって言わなかったっけ? 騙された!! 彼も喋るくまのぬいぐるみに驚いたのか、一瞬怯んだ。
2017/05/26 23:09
本当にやめて、圭くん!! 早まらないで!! 彼女……香苗ちゃんは、圭くんに音楽を楽しんで欲しい、って感じている。死ぬ必要なんてない!!
2017/05/26 23:12
うるさい!! 気安く香苗の名前を呼ぶな!!
2017/05/26 23:14
歌音は、完全に押し負けてしまい、圭に突き飛ばされ、地面に転がり込んだ。マジで痛い。タイツが破れて伝線が入っている。転んだ際に、腕や襞を擦りむいた。
2017/05/26 23:15
どうしたら良いの?止められない……。歌音には、圭を止められないの?
そんな時、彼女の声が感情となって溢れてきたのだった。
2017/05/26 23:18