一年目コンクール地区大会 舞台裏
文字数 1,328文字
そう……歌音は今コンクールの舞台裏までやって来た。打楽器の運搬準備を整えるメンバーとただ自分達の演奏を待っているメンバー……。各自の緊張感が伝わってきて気分が悪い……。今にも大きな緊張の渦に飲み込まれそうだ……。
歌音は、大きく深呼吸をする。
すると、回りが鮮明に見える……。
顔を真っ青にして震えている里紗とそれを何とかしようとする昴と渚がいた。
巨大な大木に蔦で縛られた蝶……。目には輝きがなく、されるがままの状態になってしまっている。どうしてここまで放置してしまったのであろうか……。ストーカーや嫌がらせが原因なのかもしれない。
あまり緊張を覚えていないのか悠や圭・結愛は、余裕の表情を浮かべている。本番慣れしているのだろうか?
勝己の様子をチラッと見る。少し緊張しているのかテナーサックスを支える手や指が震えているのが分かる。
しかし、この日思い知らされる。
魔物が歌音たちに襲いかかってくることを……。歌音が知らぬ間にその魔物の罠に引っ掛かっていたことさえ気がつかない……。
本番までもうすぐだ。
前の学校の演奏が終わり、会場では拍手が巻き起こる。拍手喝采……。
しかし、これはうまい学校の人たちの罠。
歌音たちの演奏が幕を開ける。