獣道にご注意
文字数 2,380文字
危ないぐらいのスピードで森林の中を走り抜けていく。木が何本も通過していく感じが気持ち悪く感じる。それでも走り抜けないと一成が報われない。前の周回で移動中に俺が事故って勝己を殺してしまった。結愛をドラマチックアイロニーに追い込んでしまった周回があった。
それを一成は繰り返すわけにはいかない。歌音のためにも一成はここで踏ん張らないといけない。
しかし、いきなり目の前に障害物が現れ、一成は急ブレーキをかけた。後ろに乗っている歌音・悠・圭・結愛・勝己が大きく揺さぶる結果になる。
すまん……勝己。勝己のことを考えていたつもりなのだが……。目の前には、木が倒れている。倒木……。最悪だ……。
そして、彼の手の中に刀が生み出される。彼が刀の鞘を握りしめ、倒木に向かって切りつけた。
すると木が半分に切れ、通行が可能なぐらい道が開かれる。
これが白川圭の能力……。初めて見たけどトップレベルの強さだ。
圭がハイエースに戻ってくる。
しばらく走ると病院が見えてきた。
無事に到着できたことを一成は、ようやく過去の過ちから報われたのだと確信した。
急患だ、とナースに伝えるとすぐにタンカーを持ってきてくれ、勝己を乗せて治療室に入っていった。
結愛も診察の番号をとることが出来、診察待ちだ。
勝己のことを心配しているようで自分のことはどうでもよさそうな表情をしている。
勝己は、鎮痛剤が効いているのかぐっすり眠っている。良かった……。これで死亡フラグ一本へし折ったな……。
前回の過ちを繰り返さなかっただけ進歩だろう。
一成は何故ここまで言われなきゃいけないんだ!!、と心の中で思う。
やっぱり亜里沙を連れてきた方が良かったかもしれない……。
一成は、何も言い返せないまま……。
一成が口を開こうとした時、一人の女性が俺の助けに入った。
結愛の診察も終わったそうだ。診断結果は、捻挫。骨折じゃなくて良かった……。
ここまで連れてくる自信はない……。本当に死亡フラグはもう勘弁して欲しい……。
そう思っているのは歌音も同じだろう。
一成たちは、どうしてこんな変な戦いに巻き込まれた理由を教えて欲しい。明里が関わっているなら一成は、歌音を守るため何だってやる。
愛する生徒の為なら一成は何だってやってやるさ!!、と心に誓うのであった。
これは、一成が秘めた思いのはなし……。