合同演奏会当日①
文字数 2,268文字
十二月二十一日、天気は雪。朝から冷え込みが激しく、私たちの吐息もすぐに白に染まる。
楽器運搬は、体調不良で早退した悠くん以外で作業を進めておいたおかげで濡れるような事態はなかった。
今日は、観光バスも貸し切りだし、楽器を運搬してくれるトラックももちろん、私たちは今日一日をホールで過ごすことになる。
何か居心地が悪い。誰も話したりしない空間に私は押し潰されそうになった。私の隣に座っている圭くんも何かと体調が良くなさそうだし……。これは、無事に終わる気がしない。
みんな、黙ったままなんて初めて。私は、そのまま白の世界を見つめる事しか出来なかった。
私たちが到着した頃には、本日の主役となる四つの仙台市の高等学校のメンバーが集まっていた。
私たち、ミラージュ音楽学園高等学校と全国常連の聖セリーヌ学園高等学校、新勢力の竹下高等学校、東北大付属仙台高等学校のメンバーが揃っていた。
もちろん、私が顔合わせするのは、夏のコンクール以来になるだろう。出来る限り本番までは、誰にも会いたくない……と思っていた。
しかし、一人の人物の登場で私の予定がだいぶ狂ってしまった。
始まる……。
仙台市にある四つの高等学校による冬の音楽の祭典が幕を開ける。
でも、私たちも凄い練習してきたんだし、周りに魅せる演奏をすれば良いんだ。
因みに、ミラージュ音楽学園高等学校のリハーサル順は、全国常連の聖セリーヌ学園高等学校吹奏楽部の後。
今は、聖セリーヌ学園高等学校吹奏楽部が、リハーサル中。何故、リハーサルなのにこんなにもみんな緊張しているのだろうか。私まで緊張してきた。
聖セリーヌ学園高等学校吹奏楽部のリハーサルが終了し、舞台から色々な楽器が運び出されてきた。その時、私はたまたま聖セリーヌ学園高等学校吹奏楽部の女子部員と視線があってしまった。とても鋭い視線をしたお嬢様系の女の子と……。
何か嬉しいかも……。
この演奏会……やっぱり無事に終わる気がしない。
私は、胸を締め付けられる思いで、舞台で待機しているメンバーの元へ向かった。