君の手を離さない①
文字数 2,022文字
それは、僕の今までの繰り返した過ちの記憶を遡っていけば分かる話。
そう世界は、〝何度も明里の力によって滅ぼされている〟というあり得ない話になっていた。
「いつ明里に言われるのか」とヒヤヒヤしていたが、こんなに早くこの展開が来るなんて思ってもいなかった。だから、今相当焦っている。
そして、〝過去に繰り返してきた過ち〟について。どの世界線でもクラスメイトは、全員生き残れなかった。みんな、死んでしまったこと。それぞれ理由があったんだと思うが、今回は予想を遥かに上回る変化球が続いていた。友情を呈した〝昔の約束〟は、とっくの昔に破られ、それは友情から恋仲にシフトされてきた。実はいうと僕も〝過去の約束〟なんてとっくに破っている。あの日の〝約束〟は、誰一人守られる事はない。
そうこれは、鴫沼 智准教授の小説「勿忘草の約束」に近しい世界になってきている、ということ。
「勿忘草の約束」には、恋愛が苦手な准教授が同じ研究室の院生の女性に恋をするストーリーが書かれている。准教授の周りには、門下生の女の子・門下生の慕うクラスメイト・門下生の恋人・門下生の弟などが入り雑じる。院生の女性が、謎のゲームで殺害された事により、その准教授も危険な研究により命を削り、最期は大学の時計塔から飛び降り自殺を図る。
その物語には、続きが存在していた。
准教授の死後の物語……それは「門下生の女の子の愛と死と破滅の物語」
門下生の慕うクラスメイトが病気で、恋人が通り魔に刺され、亡くなってしまう。最終的に門下生も凶弾に倒れ、命を落とす。残された門下生の弟も焼身自殺を図るエンドだった。
もし、その〝門下生〟がうちのクラスにいるとしたら……。次、命を狙われるのは……僕かもしれない、ってこと。
宣戦布告の一つや二つぐらいしておいても良いと思う。
僕は、普段はあまり笑わないが渾身の笑みを浮かべた。
天井から崩れた粉々とした瓦礫がパラパラと降ってくる。
この大きさだと二人は、余裕で脱出が出来る。明里と脱出も可能。
しかし、崩壊の早さは思った以上で、能力石のアクセス回路を探している時間がない。愛花さんの事だから簡単だと思っていたが、なかなか能力石のパスワードを解析できない。
それと同時だった。僕と明里のいた足場が崩壊し始めたのは……。