氷の涙②
文字数 2,291文字
十一月の中頃ぐらいから冷え込みが激しかったのは何となく分かっていた。ウチの住んでいた芦屋に比べてみると仙台は北にあるし、寒いのは当たり前。それにウチは、振られたんやし一人ぼっちなのは当たり前。何か心にぽっかり穴が空いてしまったような感じ。
何とか歌音ちゃんと明里ちゃんの部屋で見つかった曰く付きの譜面「ライラックの片恋」は、何とも言えないようなおぞましいオーラを放っていたのを思い出した。どす黒いオーラにウチものまれてしまいそう。
気がついたらウチは、屋上に来ていた。多分、高等部だと思うんやけど……。みんなが小さく遠く見える。ウチは、いったい何をしたいんやろうか……。何故、こんなところに一人でいるんだろうか……。そんなのこっちが聞きたいんやけど……。
こんなに悲恋で溢れているんならいっそうの事……
それだったら、ウチはどうしたらエエの? 突然の突風でウチの手元から離れた曰く付きの譜面が舞い上がる。排水ポンプの裏に隠れていた昴くんと里紗ちゃんが飛び出してきたが、舞い上がった譜面には手が届かない。
そのまま譜面は、風に乗って飛ばされてしまい、ウチはその場に崩れ落ちる事しかできなかった。
世界は、悲恋で溢れている。ウチは、もう後戻りは出来ないんや。先に進む事を決意せざるをえない。
里紗ちゃんに手をひかれるウチ。周囲は、水のベールで包まれているかのように滲んで見えた。