勇者のマズルカ
文字数 1,356文字
歌音の体調は、あれから異常も起きることなく、正常な生活を送っていた。
今日、文化祭前の最後の合奏だ。まだまだ完璧ではないけど、今日でほぼ完璧に持っていくつもりだ。
今日も皆が私の指揮を振るのを待っている。(一部の人間は、歌音を認めていないが……。)
完璧じゃなくても、人々の心に届く音楽を……。ハーモニー・メロディーを届ける。
最初は、指揮を振らない。
パーカッションパートにお任せしてみることにした。彼らと彼女らは、コンガとボンゴを小刻みに叩き、こう叫んだ。
歌音も楽しげに指揮を振ると、あらゆる個々のキャラクターが色づいて飛び出してきた。勇者は雄々しく、精霊やセイレーン・妖精たちは、優雅に音符のベールを築き上げ、その上で歌ったり、踊ったりしている。
しかし、まだ心を開いていない人もおり、音楽は感動を与えるものとは思えても、動きがぎこちなくなってしまう。フルートだけのメロディー……やっぱりぎこちなく聞こえる……。本番でどうなるのか心配になってきた。
しかし、真奈美や冬馬も楽しく歌音の指揮に乗っかってくれているのが良いと思う。
明日からは、ミラージュ祭だ。
一週間の盛大な町や学校をあげての最大のイベントが幕をあける。
その日の夜は、色々考えすぎて眠ることができなかった。
そして翌日、遂にミラージュ祭が、マーチングバンドのファンファーレで幕を開けたのであった。