姫巫女の告白と覚醒
文字数 2,239文字
その時だった。
ようやく固く口を閉ざしていた詩織が口を開いたのだ。
ここにいるのは、四人だ。どう考えても不利すぎる。相手は、何人でかかってくるか分からない。それでも、立ち向かう心は大事だ、と歌音は思った。詩織も同じ事を思っているだろう。
その時、異変が起きた。木枯らしが吹き荒れ、埃が目に入ってしまい、四人は目を開いていられない。
次に目を開くと、見知らぬ黒スーツの男が立っていたのだ。圭は男を鋭い視線で睨み付ける。
しかし、男は何をしてくるか分からない。圭は慎重になっていた。手には、氷の刃を握りしめ、いつでも飛びかかれるようにしている。
歌音は、その様子を見守ることしか出来なかった。歌音の能力は、戦闘に特化はしていない。だから、圭の戦いを見守ることしか出来なかった。聡太と詩織を守ることを考えて立ち尽くすしかなかったのだ。
……ってか、何故今更俺たちを殺しにきた?! 何ならもっと早くに殺せたんじゃないのか? 例えば、あの史上最悪の鉄道事故とかで今のクラスメイト全員を殺せたんじゃないのか?
しかし、今はそれどころではない。目の前では、圭が男に追い詰められつつあった。圭が追い詰められると歌音たちにも脅威が迫ってくる。何も出来ない歌音は、自分を責めてしまいそうになる。もっと戦える力が欲しい……、と思いながら圭を見つめていた。
男は、ニヤリと笑みを浮かべている。
その場には、木枯らしの音と楽器の音色だけが鳴り響いていた。