囚われの乙女
文字数 1,725文字
また、花だけを切り落としてしまった。
夜更けということもあり、誰の姿も見かけなかった。
十二月が近づく仙台の夜は、とても冷える。カーディガンだけだと少し底冷えがする。
本当は、嘘をついた。バイト先に忘れ物なんて嘘。本当の事実、愛花は一人になりたかった。一人っきりで川の流れと音を楽しみたかった。
しかし、今はそれさえも頭の中に入ってこない。愛花が好きな人には、思い人がいる。それは、分かっている。
それでも、それを抑え込む事が出来ないぐらいの衝動にかられていた。
愛花は、白いポピーの花弁を拾い上げると、歩みを進める。
恋や愛は、優しいものであるが、時に狂気となり、周りを苦しめる事になる。
これは、愛花にとっても苦しめられる恋の現実なのだから。
夜は、更けていく。
そして、愛花の狂気は動き始める。