夏の終わりの音色
文字数 3,103文字
歌音は、安心した。こんな日々が続けばいいのに……。
ユーフォニアムソロと無伴奏ソロの件だが、双葉がやることになった。練習するにつれて、ソロにもメリハリが出てきている事に歌音は、気がついた。
そして、遂に本番の日を迎えたのだ。
夏の終わりの風が吹き抜ける仙台は、夏と秋の空気が漂っていた。
このフェスティバルが終われば、夏が終わる。
新しい季節を迎えることになる。
明日からは、九月で文化祭に向けての練習が始まる。
歌音は、この五ヶ月で色々な事件に巻き込まれてきた。そして、色々な人を助けてきた。半年もしないうちに何回も死にかけるってどういうこと? まあ、今はそんな事どうでもいい。
歌音は、本番用の衣装に身を包み、その時を待っていた。
どうしよう……。
今、演奏しているのが地方大会がダメ金だった竹下高等学校吹奏楽部。曲は「リトルマーメードメドレー」「Let's it go」……。
やっぱり地方大会ダメ金の演奏はうますぎる……。歌音は、自分の指揮をとれるのだろうか……。
歌音は、そう決意するのであった。
歌音は、舞台から戻ってきた相川奏斗にいきなり話しかけられる。
彼の中から少しどす黒い感情が芽生え始めていたとかこの時、本当に知らない。
歌音は、みんなが待つ舞台に出ていった。
歌音たち……ミラージュ音楽学園高等学校がやる曲は、二〇一五年吹奏楽コンクール課題曲四より「プロバンスの風」「君の名は。」コレクション。何故、課題曲にしたのか? スパニッシュ系の音楽にしたのかは、この話の中で説明しよう。だから、少し待ってもらおう。
歌音は、両手を構えると、メンバーは少し焦るが、楽器を構える。
よし、始めよう。歌音たちの音楽を……。
手だけで指揮をするのは初めてだ。ここは、何とか……。
金管・サックスのメロディーとクラリネット・フルート・オーボエの連符のかけあいで曲は、盛り上がりを見せる。
クラリネット・サックスのメロディーとフルート・オーボエの連符が彩りをつける。
途中から金管隊が入り、曲を盛り上げていく。
金管低音隊が、重厚なメロディーを奏であげる。クラリネット・フルート等が彩りを更に加えてくれる。
いつしか、曲は中間少し前までくる。金管隊がメロディーをフルートやクラリネットが奏であげ、曲は中間部に入りテナーサックスやユーフォニアムのメロディーに変わる。途中から色々な楽器がトッティーで吹き上げる。
明里の奏でるピッコロソロは、メロディーの上を踊る踊り子のように跳ねている。
いい感じだ。
最終近くなってき、トランペットや金管のファンファーレが鳴り響く。
シロフォンがピッコロソロと同じフレーズをきらびやかに奏であげ、曲は再びファンファーレを吹き上げ、終演を迎えた。
「君の名は。」コレクション。
新海誠監督の有名な映画「君の名は。」その主題歌四曲を作り上げ「RADWIMPS」というバンドの楽曲のコレクション。
歌音は……再び手で指揮をとることにした。
一番困っていた「夢灯籠」から始まる。圭が奏であげる甘いトランペットソロ……。全員がトゥッティーで入り、すぐに双葉が奏でるユーフォニアムソロにうつる。とても濃厚でキャラメルのように甘いユーフォニアムソロが響き渡る。凄い……ここまで成長したんだ。フルートのミミの音も安定しており、なかなかの出来だ。
そのままのアップテンポのまま曲は「前前前世」にうつる。アップテンポの楽曲で金管の中低音がメロディーを吹き上げる。そのあと、木管隊や金管隊などがメロディーを交代で吹き上げる。
一旦、曲が途切れ、「スパークル」のピアノの代用したフルートのミミのソロが始まる。
ピアノのように跳ねるようにソロを奏であげるミミは、天使のように飛び立ちそうな音色を奏であげた。
曲は盛り上がりを見せ、再び落ち着きを取り戻す。「なんでもないや」のユーフォニアム無伴奏ソロが始まる。とても落ち着きのある双葉のソロは、自分から助けを求めるのではなく、自分で動き出しそうな音色で奏であげる。
高い塔から降り、旅装束の少年とお嬢様に駆け寄るお姫様がいた。
これでフィナーレだ!! 最後の一音に魂をこめ、歌音たちの演奏は本当の終演を迎えたのであった。
終わったあと、双葉とミミが抱き合っているのが見えた。良かった……これで事件は解決だ……。
そういえば、ミミを操っていた犯人は誰なんだろうか……。
再び歌音の元に奏斗がやって来た。
歌音も皆のところに戻り、楽器を梱包し、トラックに楽器を積み込んでいく。
そういえば、合同演奏会……って言っていたけど……。何の事なんだろうか?
今は、先の事を考えるのはやめておこう。どうせ、ろくなことない。
歌音たちは、夏の終わりの夕暮れの町を見つめるのであった。
今日で夏が終わる……。季節は加速するように進む……。