音楽のフェアリーの嘘恋
文字数 1,495文字
あの日の大河との喧嘩以来、郁は大河との接触を避け、女子たちと行動しているのが目についた。
合奏でもコントラバスの音色が上の空で、宙を漂っている空気みたいに軽く、低音を支えるにはただぎこちない演奏を続けているだけであった。
このままだと「第六の幸福をもたらす宿」も「sing sing sing」も薄っぺらい音楽になってしまう、と歌音は思ったからだ。
後、歌音と郁には同じクラスの人というぐらいしか接点はない。
歌音は、この大事な目的を果たして大河を普通の状態に戻す。大河は、何者かにつけこまれている……。
大河の呟きは、誰一人聞くものはいない。
だから、物騒な事を言っても誰も聞いていない。大河はそう思っていた。
しかし、大河の後ろに黒スーツの紳士がいることに気がついていなかった。
大河は、その復讐の意味を理解していない。理解するのはまだまだ先の話。