音楽よりも甘いキス
文字数 2,608文字
今、目の前に好きな人がいる。
何年も歌音が勘違いをし続けてきた大好きな人が……。
はっきり言って貞操の危機ですが……。これはこれで良いんだよね?、と歌音は自分に言い聞かせる事しか出来ない。
大好きだから圭の事を受け入れよう。
しかし、いざってなると人間は怖じけついてしまうのが事実なのだ。
その時だった。歌音の唇に温かくて柔らかい何かが当たった。驚きのあまり歌音は目を見開いてしまう。
目の前には、圭の整った顔がある。この時初めて歌音は圭にキスされている事が分かったのだ。
圭は、歌音が目を見開いたのを確認すると歌音の頬に手を添えて、耳元で甘い声で囁く。
はっきり言って恥ずかしい。
歌音は圭にバレないように薄く目を開く。すると、黒い靄のようなものが圭から抜けていくのが見えた。これが呪いの正体?
黒い靄はいつの間にか綺麗さっぱり圭から抜けきったのを歌音は見ていた。
それにしてもキスの時間が長い!!
歌音は息苦しくなり、圭の肩を叩いた。すると、圭は歌音から距離をとり、離れた。
圭は、苦笑いを浮かべるしかない。
圭は、歌音の咄嗟の発言に驚きを隠せない。圭は考え込む。顔を赤らめ俯いてしまう。歌音は、圭の心の音を聞く。圭の心には、天使と悪魔がせめぎあっているのが見える。これは、どういう意味なのだろうか? 歌音には理解が出来ない。
「気持ちいい事」って何? 歌音には理解できない。理解できないからこそ未知の領域に踏み込むことを躊躇したくなった。それもそのはず。「悠も巻き添え」と聞いた歌音は、他人を巻き添えにしてまであんなことやこんなことをしたくはない。
それにしても男という生き物は強引だ。とんでもないことを圭は考えているに違いない。歌音は、じりじりと圭から距離をとろうとした。
しかし、圭は歌音の事を逃がさなかった。手を掴み、とんでもないところに歌音の手を持っていった。
しかし、またしても圭に邪魔される。
「もうなるようになれ!!」、と歌音は圭に近づき、耳元で囁く。
歌音は、もう何も知らない。圭に近づき、唇にキスを落とす。
『契約』? そんな事もう知るか!! 一成……もう怒られても構わない。
二人の世界は、今から色づき始める。