慈愛の踊り子の過去
文字数 1,841文字
渚は、夢を見ている。同じ中学校でクラリネットをやっていた里紗は、小学校からやっているベテラン中のベテランで渚の憧れであった。
しかし彼女にも欠点があった。里紗は、友達が少なかった。里紗は、母親がフルートのプロだったこともあり、才能の事をとやかく言われていた。
中学に入って渚は、当時初心者で吹奏楽部に所属した。吹けないけど里紗の音を聞いていると心が安らぐ……そんな感じだった。
その時、たまたま里紗と同じクラスになったのだ。里紗は、やはり孤独であった。
周りは噂をしたり、バカにしたり、そんな心の声が聞こえてきた。渚も変な子だと思われているかもしれない。そう思ったのだ。
そんな里紗は、いつでもソロを吹いていた。堂々とした表情でソロを吹くと周りは、感激したかのように立ち上がり、里紗に拍手を送っていた。
中学3年の夏、里紗がスランプに陥ったのだ。腱鞘炎にもなり、1人で苦しんでいるのを後目に、渚は見守ることしか出来なかった。
そして、迎えた地方大会。地区大会すらギリギリで勝ち上がった渚達の目の前に椿中学校吹奏楽部が立ちはだかった。この中学校は、毎年全国に行っている強豪校。そのあとには、神戸にある金橋中学校……。
里紗は今後のトラウマに陥る出来事がある。ソロがブレブレになり、リードミス多発。
結局、渚達の中学校は、全国には行けなかった。銅賞……最低の成績。
皆、里紗を責めた。渚は、里紗は悪くない、と言っても無駄だった。その場から逃げ出してしまった里紗を追いかけて……ようやく河原でしゃがみこんで泣いている里紗を見つけた。
金橋中学校は、全国に出場を決めた学校。そんな人が何しに来たの?、と渚は不審に思ってしまった。
そうその時ようやく里紗から友達として認められ、ここまで至る。昴がいなければ、ここまで至らなかった。
長い長い夢が覚める。