圭の豹変
文字数 2,614文字
奏斗は、そんな事どうでも良いのか歌音に話しかける。
しかし、圭はそれが気にくわない。どうしてこんなにも普通に異性と話せるのか……。圭は、奏斗に嫉妬の念を覚えた。モヤモヤして気分が悪い。
圭は、二人の話に割って入り込んだ。
しかし、圭はそれをさせなかった。歌音の手首をがっしりと掴み、奏斗を追いかけられなくしたからだ。
歌音は、無駄な抵抗をしたが、奏斗の姿が人に紛れ、見えなくなると抵抗するのを諦めた。
それでも圭は歌音の手首をがっしりと掴んだまま離さなかった。
しかしだ。歌音は見逃さなかった。圭の瞳が何時もの優しいルビー色では無いことに……。ピンク色に妖しく濁った瞳で見つめられた歌音は激しい悪寒を感じた。
嫌な予感しかしない。
圭は、歌音の手首を掴んだまま歩き出す。圭の歩くスピードは何時もより早く歌音の事を全く考えていないものであった。
しかし、次の瞬間歌音の血の気がひくことになる。目の前には、如何わしい雰囲気のホテルがあり、ロビーも如何わしい感じのピンク色に包まれた世界が広がっていた。
慌てる歌音を後目に圭は歩みを進める。今日、歌音は犯してはならない罪を圭と一緒にしてしまうのであろう。
「契約」以上のことになると多分一成に怒られるだろう。それとも歌音と圭の行方を追って何人かの友人たちが動き始めているかのどちらかであろう。
いつの間にか部屋に着いていた。歌音は恐れおののいた。圭の様子がおかしい。瞳の色がピンク色のままだし、何かに欲情しているかのような妖艶な表情を浮かべ、歌音に近づいてくる。
何故、圭がこんなにも迫ってきているのかも理解できない。
歌音は、圭のことは「友達として大好き」と思っている。そう心に決めている。
でも、それを思っていると謎の苦しさを覚える。その正体を歌音は知らない。
誰か来てくれる事をただひたすら祈ることしか出来ない。
圭の呪いの解除方法が分からない歌音は、圭から少しでも距離をとるように後退りしていくばかりだ。
歌音は、友人と恋人の狭間でさ迷っている……。